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Wednesday, September 1, 2021

「私は、まともな子を産んだんだ」「誰にも言わずに生きていきなさい」と言われ…後悔すらした母へのカミングアウト - 文春オンライン

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 2016年10月10日に、夫と結婚式を挙げた七崎良輔さん。自分がゲイであることを認めた瞬間から、彼の人生は大きく動いていきます。さまざまな出会いや別れ、喜び、悲しみ、怒り──幾多の困難を乗り越えて、生涯のパートナーに出会い、そして2人は大きな決断を下しました。

 同氏による『僕が夫に出会うまで』(文藝春秋)の文庫発売に合わせて、家族へのカミングアウトについて明かした記事を再公開します。(全2回の2回目/前編を読む)(初出2019年5月21日、肩書き、年齢等は当時のまま)

◆◆◆

 北海道に帰省して2日目の早朝、家族はまだ夢の中だが、僕は一睡もせずにお酒を飲んで、気合いを入れていた。飲んでも飲んでも酔いが回ることはなかった。ついにその時がきた。僕は寝ている母を少し早めに起こした。

「お母さん、起きて。話があるんだ」

「なにー? 後にしてよー」

 母はまだ寝ていたいと言った。でも2人きりで話せるのは今しかないかもしれない。

「大事な話なの」

 母は何か嫌な予感がしたのだろう。むくっと起き上がり、怪訝そうな顔で僕を見つめた。

「なに? なんか怖いんだけど」

 母と2人でリビングの食卓の椅子に向い合わせで座った。

 

「頭を抱える」とはまさにこの事だと思った

「あまりショックを受けないで欲しいんだけど……」

「え、なに。学校辞めたの?」

「ううん、辞めてないよ」

「じゃあなに? 誰か妊娠させた?」

「誰も妊娠させてないよ!」

「じゃあなによ。早く言って。こっちはドキドキするんだから」

「あのー……、僕は、男の人が好きなの、昔からなんだけど。それをちゃんと伝えておきたくて。僕はいわゆる……ゲイなの。男の人しか好きになれない。だからって、病院に連れてっても無駄だよ、治るものじゃないし、治すものでもないんだからね。でも僕はそれでいいと、最近やっと思えてきたの。自分を受け入れることができて、今は幸せ。それを伝えておこうと思って……」

 母は大きなため息をついた。両ひじをテーブルに突き、両手で顔を覆った。「頭を抱える」とはまさにこの事だと思った。長い沈黙が続き、その間、母は何度も大きなため息をついていた。

 僕からは何も言えなかった。とりあえず母の出方を待つしかないように思えたからだ。

 母はうつむいたまま、僕と目を合わせようとはせずに口を開いた。

「それって、本当に治らないの」

「治すものではないし、治らないよ」

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