ディズニーの実写版『リトル・マーメイド』予告編が公開された。主役のアリエルに抜擢されたのは、R&Bシンガーのハリー・ベイリーだ。以来、アメリカのみならず、日本ですら「黒人の人魚はあり得ない!」の声が噴出している。
日米ともに異議を唱えている人々は大枠で2種類に分かれる。生粋の人種差別主義者と、人種問題、わけてもアメリカでは非常に繊細な問題である「肌の色」について鈍感な、自称「私は差別主義者ではない」人たちで、大方は後者と思われる。その自覚のない人たちもまた、二手に分かれる。「子どもの頃の大切な思い出、白人アリエル像を踏みにじらないで」派と、「原作の改変は許されない」の、いわゆる原作原理主義者だ。
アメリカには白人が黒人を奴隷として酷使した歴史があり、ゆえに肌の色の違いは人種差別を象徴するものとなった。ハリウッド映画でも昔は白人が顔を黒塗りにして歌い踊る「ブラックフェイス」が人気だった。白人がアジア人を演じる「イエローフェイス」もあった。名作の誉れ高い『ゴッドファーザー』でドン・コルレオーネを演じた名優、故マーロン・ブランドも、若い頃には一重まぶたのメイクとアジア訛りの英語で「Sakini」なる珍妙な名前の日本人を演じている。メイクによるブラックフェイスやイエローフェイスは今では絶対的なタブーとなったものの、マイノリティの役を白人にすり替える「ホワイトウォッシュ」は現在も引き続き問題視されている。
今回の黒人アリエルを、白人キャラクターを黒人化した「ブラックウォッシュ」とそしる声があるが、これは差別のあり方の認識を誤っている。差別とは強者から弱者になされるものであり、被差別側による克服策を、強者はしばしば「逆差別」「報復」と攻撃する。ハリウッドでは長年、支配層の白人がマイノリティを演じることにより、白人の解釈によるマイノリティの誤ったステレオタイプが拡散され、かつマイノリティ俳優が活躍する場が奪われてきた。近年、マイノリティの俳優や監督がようやく自身の物語を演じ始めているのだ。これは逆差別でもなければ、報復でもない。
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