『頭がいい人の脳の使い方』(小田全宏 著、あさ出版)の著者は、30年以上にわたり、多数の企業、団体で研究や講演を行っているという人物。
記憶法のレクチャーをする際には、参加者に対して「あなたは自分の脳や記憶力について、100点満点で何点をつけますか?」と問いかけているのだそうです。
興味深いのは、その結果、大多数の方が50点以下の点数を答えるということ。それどころか10点や20点、0点と答える人も少なくないのだといいます。
しかし、それは「頭がいい・悪い」ということと関係があるのでしょうか?
そもそも「頭がいい・悪い」とは、どういうことなのでしょうか?
私は、自身で開発した「アクティブ・ブレイン・プログラム(アクティブ・メソッド)」という脳の活性化メソッドを用いて、15年以上、子どもから大人まで多くの人々に脳の使い方を教えています。
その中で、「頭がいい・悪い」は、「頭の正しい使い方を知っているかどうか」、そして、「自分の心を正しく目標に向けることができるかどうか」によることがわかってきました。(「はじめに 自分の『脳』に自信がありますか?」より)
つまり、その考え方に基づいて書かれたのが本書。具体的には、勉強や仕事などの課題に取り組むうえで、より効率的に、そして効果的に脳を使う方法を紹介しているわけです。
きょうは第4章「『脳力』の効果は集中で変わる」のなかから、「アイビー・リー・メソッド」をピックアップしてみたいと思います。
「忙しい」をカットするための有効な方法
「忙しい」ということについて、多くの人は「やるべきことがたくさんある状態」だと考えているのではないでしょうか?
しかし著者は、「忙しい」という意識と「やるべきことの数」とは、必ずしも相関していないと主張しています。
正確にいうと「忙しさ」とは、なにかをしているときに、別のやるべきことが脳に浮かんでくる状態。
つまり、やるべきことが10個ある人も、目の前のこと1つだけに意識を集中できていたとしたら「忙しくない」ということ。
逆に、やるべきことが2つしかなかったとしても、1つのことをやっているときに、もうひとつのやるべきことが脳のなかで点滅していたとしたら、それは「忙しい状態」。
そもそも人間は、本能的に複数のことが気になるようにできているもの。そのため、頭の中に複数あることが普通の普通の状態だというのです。
だとすれば、どうしたら頭のなかを1つのことだけにできるのでしょうか?
大切なのは、すべきことを整理して、心おきなく目の前のことだけを考えられるようにすること。
そこで著者は、シンプルでありながらもっとも有効なタスク整理術である「アイビー・リー・メソッド」を紹介しています。
これは、「1つの作業が終わるまで、次の作業をやってはいけない」というルール。
アメリカの経営コンサルタントであるアイビー・リー氏が、大手鉄銅会社ベツレヘム・スチール・コーポレーションの会長から、「毎日、忙しくて頭が混乱している。なんとかしてほしい」という依頼を受けて提示したもの。
20世紀初頭の話ですが、以来100年以上にわたり、世界中で活用されています。
このメソッドを使うと「忙しい」という感覚を効果的に払拭することができ、「忙しさレベル」が格段に下がり、安心して目の前にあるものに集中することが可能になると著者はいいます。(135ページより)
アイビー・リー・メソッドとは
「アイビー・リー・メソッド」は、次の6つのステップで行うのだそうです。
1 その日すべきことを6つ書き出す
ただし、「15時に○○さんと仕事の打ち合わせをする」というように、すでに予定として決められていることは書き出さないようにすること。
なぜならこのメソッドの主眼は、「なにかをしているときに、他のことに意識が散らないこと」「緊急ではないけれども重要なこと」に意識を向けて、自分の時間の質を変えることだから。
2 書き出した6つに順番をつける
自分が取り組むべき順に(重要なものから)番号をつけていくということ。
3 「1つの作業が終わるまで、断固として次のことをやらない」と決め、メモに書いた順番に従って1つずつ実行する
1つ作業を終えることに「よし」と言い、心のなかで喜びの満足感を意識的に味わう時間を持つころが大切だという考え方。なお、時間の長さは関係ないそうです。
4 1~3を繰り返す
5 できなかったことは後悔せず気持ちよく受け入れる
たとえば6つのうち2つできなかったとしても、それを苦にするのではなく、「それでよし」と心のなかで踏ん切りをつけることが大切だといいます。
6 明日やるべきことを6つあげる
前日にできなかった残りの課題を、次の日の1番目の課題にするのもひとつの手。ただしそれを必ずしも最優先にする必要はなし。
できなかったことを翌日の最優先課題にしていくと、できなかった課題が日に日に膨れ上がってしまうからです。
このメソッドのポイントは、「1日を1日でリセットする」こと。
したがって、前日できなかったものが「次の日に最優先すべきもの」だと思えるのなら、そうすればいいだけのこと。
しかし、さらに価値のある課題が出てきたのであれば、そちらの順位をあげてもかまわないわけです。
アイビー・リー・メソッドを実行する時のポイントは2つです。 まず、課題に取り組んでいる時に別のことを頭の中で考えないこと。
そして、その課題ができあがった時に、「うれしい」という喜びの感情を持つことです。(139ページより)
いままで何千人もの人たちに集中力のトレーニングを行なってきた著者は、多くの人がこのメソッドを通して満足できる結果を生み出してきたことを目の当たりにしているのだそうです。(137ページより)
専門的なノウハウを軸としながらも、それらをわかりやすくまとめているところが本書の魅力。つまり肩肘を張ることなく、脳のよりよい使い方を学ぶことができるわけです。
ビジネススキルを高めるため、ぜひとも参考にしたい一冊です。
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Photo: 印南敦史
Source: あさ出版
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