Photo: Pascal Le Segretain/Getty Images
先日発表された、ラフ・シモンズがミウッチャ・プラダとプラダ(PRADA)の共同クリエイティブディレクションに就任したというニュースは、業界に大きな驚きと興奮をもたらした。ラフのプラダデビューは来シーズンのミラノコレクションだが、ファッション界はすでに、期待をもって彼らの動向に注目している。
ウィメンズであれメンズであれ、ファッション界でもっともスマートかつ独創的な2人が互いに刺激し合うと、一体どんなクリエーションが生まれるのだろう? そしてミウッチャにとって、ラフとタッグを組む価値とはなんだろうか? おそらく彼女の答えははっきりしている。楽しいことができることが、純粋に嬉しいのだ。彼女は、この自身にとっての「楽しいこと」を、かつて『System』誌のインタビューでこう定義している。
「ファッションのあり方の裾野を広げると同時に、楽しいことに挑戦すること。私の考えでは、本当に良い仕事ができている時にこそ楽しさを感じるのであって、その楽しさというのは、自分ひとりではなく他の人と一緒にやってこそのものだと思うわ」
2人がブレインストーミングして紡ぎ出されるクリエイティビティは、プラダという世界トップクラスのブランドで、今にも爆発しそうな勢いだ。同記事には、ラフによるミウッチャ評も掲載されている。
「どの観点から見ても、ミウッチャにはとても明確なビジョンがあることがわかる。彼女の考え方、世界の見方、芸術の見方、それに政治的意見までもが伝わってくるんだ。そして彼女は、たった1人で、それらを組み上げて本当に大きなものをつくり、多くの人々と共有している。それはすさまじいこと。心からリスペクトしているよ」
2017年春夏プラダのメンズコレクションに姿を見せたラフ・シモンズ(右)。Photo: Vittorio Zunino Celotto/Getty Images for Prada
2人は少なくとも2005年から交流がある旧友だ。きっかけは、ラフをクリエイティブディレクターとして雇ったジル・サンダー(JIL SANDER)が、当時プラダグループ傘下だったことだ。それが彼にとって、初めてウィメンズラインをデザインする機会となった。
1995年以来、ベルギーのファッション業界と10代のサブカルチャースタイルを率いる存在となっていたラフは、ジル・サンダーで過ごした7年間で極めて重要な成功を収め、それが大手ブランドでのクリエイティブディレクターとしてのキャリアにつながった。彼は2012年から2015年の3年間、クリスチャン ディオール(CHRISTIAN DIOR)に所属し、2016年から2018年にかけて、カルバン クライン(CALVIN KLEIN)のリブランディングを率いた。もちろんその間、彼が自身の名を冠したブランドを止めることはなかった。
さて、ラフ・シモンズは、プラダになにをもたらそうとしているのか? 彼のデザインルールを振り返りながら、両者の共通点と相違点などを8つのポイントから詳しく見ていこう。
1. 大胆な色づかい。
〈左から〉ジル・サンダーの2007年春夏コレクション、ラフ・シモンズの2019年春夏コレクション、ディオールの2012-13年秋冬コレクション。Photos: MarcioMadeira/ GettyImages
はっきりした色合わせを大胆に使うスタイルは、ラフのデザイン美学に不可欠の要素だ。彼はこれまで一貫して、エレクトリックブルー、レモンイエロー、赤紫、エメラルドグリーン、赤を単独で挿し色にしたり併用して動きを持たせたりすることで、コレクションに統一感を出してきた。
2. ミニマリストなテーラリング。
〈左〉ディオールの2012-13年秋冬オートクチュールコレクション。〈右〉ジル・サンダーの2007-08年秋冬コレクション。Photos: Getty Images
黒のテーラードスーツは、彼がデザインするコレクションには欠かせないものだ。ディオール在籍時の2012年秋冬オートクチュールコレクションで発表した、センセーショナルな黒のテーラードバースーツは、ラフのスーツ観を鮮明に具現化したものといえる。このフォルムは、彼自身のコレクションやジル・サンダー時代の作品にも見て取れる。ミウッチャも、ラフが得意とするジェンダーレスのスタイルには大きな共感を寄せている。
3. 独特のボリューム感。
〈左、中〉ジル・サンダーの2006-07年秋冬コレクション。〈右〉ラフ・シモンズの2001-02年秋冬コレクション。Photos: MarcioMadeira/ Getty Images, Courtesy of Raf Simons
ラフは初期の頃から、ビッグシルエットのアウターを生み出してきた。現在のストリートウェア・ムーブメントの何年も前、つまり彼が2001年秋冬コレクション(ラフが崇拝するマルタン・マルジェラからの影響が強く見られる)で発表した特大フード付きパーカを皮切りに、ゆったりとしたシルエットのコートが彼の永遠の代名詞的存在になっている。メンズでもウィメンズでも、彼の手にかかるとクールなアイテムも即座にクラシックでグラマラスに昇華されるのだ。
4. 白のシャツ、黒のタイ。
〈左〉ジル・サンダー2012-13年秋冬コレクション。〈右〉ジル・サンダーの2006-07年秋冬コレクション。Photos: Getty Images, Marcio Madeira
ラフのコレクションでは、白のシャツと細い黒のネクタイがほぼ毎シーズン登場している。この両義的なパワーポリティクスを背負う男性のユニフォームがプラダというフェミニストブランドのウィメンズウェアと出合うとき、どんな化学反応が起きるのか、楽しみだ。
5. ユースカルチャーとコミュニティ。
〈左〉ラフ・シモンズ2019年春夏コレクション。〈右〉ラフ・シモンズの2018-19年秋冬コレクション。Photos: Indigital, Courtesy of Raf Simons
ラフのデザインには、あるコミュニティにしかわからない記号性がある。とりわけパンクやテクノ、ニューウェーブ、レイブ、ガバといった20世紀のユースカルチャーは、その代表例だ。ゆえに彼がつくりだすものには熱狂的なファンがいて、彼らはすでに、ラフがプラダでどんなメンズウェアを生み出すのか、期待に胸を膨らませている。ミウッチャはラフから、こうしたイコノクラスム(偶像破壊、因習打破)のアプローチを学ぶことになるだろう。その結果、ラフ自身のデザインにも変化が及ぼされるのだろうか?
6. 意外なロマンチシズム。
〈左、右〉ディオールの2014-15年オートクチュールコレクション。〈中〉ジル・サンダー2012-13年秋冬コレクション。Photos: Getty Images
ラフには、「失われた青春へのノスタルジー」を超えるほどの繊細さと感情的な側面がある。その側面によって、ときに彼は極めて直接的なロマンチシズムの表現を繰り出すことがある。ジル・サンダー時代につくりだしたような、強く印象に残る1950年代風の可愛らしい表現や、ディオール時代に生み出したような18世紀風のガウンやフロックコートといった表現がそれだ。ミウッチャも驚きかねないこのロマンチシズムだが、きっと彼女なら「それは楽しそう!」と身を委ねるに違いない。
7. ノースリーブとショーツ。
〈左〉ラフシモンズ2016年春夏コレクション。〈右〉カルバン クライン2017-18年秋冬コレクション。Photos: Shutterstock, Indigital
ノースリーブのトップは、ラフの代名詞的デザインだ。一方ミウッチャも、イタリア人らしく同じようなデザインを好んで取り入れてきた。2人は腕を組んで、このデザインを追求するだろう。同じく、ラフのデザイン美学には「男性の脚出し」も欠かせない。ミウッチャがこれをどう受けとめるのかにも注目したい。
〈すべて〉ラフ・シモンズの2013年春夏コレクションより。Photos: GoRunway.com
8. デザインに隠された暗号。
〈左から〉ディオールの2014年春夏コレクション、ラフ・シモンズ2011年春夏コレクション、ラフ・シモンズの2017-18年秋冬コレクション。Photos: Getty Images, Firstview, Indigital
ラフはこれまで、さまざまなアプローチで謎めいた印や暗号をデザインに採用してきた。ディオール時代も、カルバン クライン時代もそうだった。彼とミウッチャはプラダのファンたちにも謎解きをさせるべく、共謀してどんな秘密の暗号を練り上げるのだろうか?
Text: Sarah Mower
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February 28, 2020 at 10:10AM
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