2003年、14歳の時に撮影した映画『美しい夏キリシマ』で主演デビューして以来、数多くの作品に出演し、日本の映画・ドラマ界に欠かせない存在となって久しい柄本佑。そんな彼が敬愛してやまない映画監督の井上昭が演出を手がけた時代劇専門チャンネル オリジナル時代劇最新作『殺すな』が1月28日(金)より劇場上映、2月1日(火)に同チャンネルにて放送される。
井上監督は公開を目前に控えた1月9日、93歳で逝去した。1960年に映画『幽霊小判』にて監督デビューしてから60年以上、日本の映画黄金時代を支え、市川雷蔵、勝新太郎をはじめ、数多くのレジェンドが出演する作品の演出を担った時代劇の名匠。井上監督が、かねてから映像化を熱望していた藤沢周平作品、それが傑作短篇時代小説「殺すな」だった。
さまざまな人間が行き交う江戸の橋を舞台に、市井の男女の喜怒哀楽の表情を瑞々しく描いた短篇集『橋ものがたり』(新潮文庫/実業之日本社刊)の中の一篇で、かつて妻を手にかけたことを悔いる浪人・小谷善左エ門と、同じ長屋に住む訳ありの若い男女、3人の男女それぞれの心模様を深い滋味と温かさをもって描いた作品。今回の映像化にあたっては、善左エ門役に中村梅雀、若い男女の吉蔵役を柄本佑、お峯役を安藤サクラが演じる。本作は2021年7月にクランクアップしていた。
同じ藤沢周平原作のオリジナル時代劇『遅いしあわせ』(15年)で、初めて井上監督作品に参加し、その人柄にも敬服したという柄本は、「『遅いしあわせ』の時に、“またやろう”と言っていただけただけでも嬉しかったのですが、本当に声をかけてくださった。現場で、監督から溝口健二監督の助監督時代や大映撮影所時代の話をもっとたくさん聞きたいと思っていましたし、宝物になりました。今回の現場で監督の『カットッ!』の声を聞けただけでとにかく幸せでした」と、振り返る。
井上組の現場は「監督のために、現場が進んでいるというか、すべてのスタッフがあえて口には出さないけれど、監督の新作を観たい、いい仕事をして監督を喜ばせたい、という気持ちでみんな動いている。だから、『よーい、スタート』がかかった瞬間、まるでタイムスリップしたかのように江戸の町や人が動き出し、喧騒まで聞こえてくるような感じなんです。初めてそれを見た時、すごく驚きましたし、僕も井上監督のために頑張りたい、とシンプルに思えました。監督は誰よりもソリッドで、誰よりも挑戦的で、若々しかったです」。
役者に対しては「こうしてくれ、ああしてくれといったことは基本なくて、『やりたいようにやってみてごらん』と役者が表現する場所を与えてくれる。『言いたくないなぁと思った台詞は、言わなくていい』ともおっしゃるんですね。きれいにまとめることよりも、観る人に伝わる芝居の方が大事だからって。そういうところに監督の懐の深さを感じていました」と柄本。実際の撮影は、基本的に長回しで、カメラ1台で撮っていくため、「毎カット、毎カット、ドキドキでした」と明かした。
確固たる演出力で作品を創り上げてきた井上監督と同じく大映のレジェンド、中村玉緒も本作に特別出演。「玉緒さんと井上監督が現場でお話していると、出てくる名前が雷蔵ちゃん(市川雷蔵)とか、勝っちゃん(勝新太郎)とか、レジェンドばかり。いまもご健在のようにお話されていました。今回、玉緒さんとご一緒させていただき、まさか同じ画の中に入れると思ってなかったのでとても光栄でした。非常にかわいらしい方で、撮影もとても楽しかったです」と、貴重な経験の数々を噛み締めるように話していた。
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