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Tuesday, March 8, 2022

クリエイター5人に聞く―2021年、なに買った? - ジャパンデザインネット

apaituberita.blogspot.com

デザイナーやアーティストなど、さまざまな審美眼を持つ方々に「さいきん、買ったもの」をテーマにお話をうかがい、「買う」という行為から、その人らしさや考え方を少しのぞく連載「さいきん、なに買った?」。

2022年も3カ月経ってしまいましたが、昨年たくさんの方から好評をいただいたこともあり、特別編として2021年に買ったものを5名の方に紹介していただく『2021年、なに買った?』を今回も企画しました。今回は、アーティストの荒牧悠さん、カワイハルナさん、映像作家の大西景太さん、イラストレーターの高松直人さん、グラフィックデザイナーの松田洋和さんの5名に、2021年に買ったものと、買い物についてのお話をうかがいました!

荒牧悠さん

構造や仕組み、人の認知に注目した作品を制作しているアーティストの荒牧悠さん。福永紙工の紙の可能性を探るプロジェクト「紙工視点」への参加や、昨年は渋谷ヒカリエ内のショーケースaiiimaで個展を開催されました。2021年に購入したものについて楽しそうにエピソードを話してくださった荒牧さんに、いくつかお気に入りを紹介していただきました。

お守りの、カーメイトのレジテック(静電気除去キーホルダー)

よく車を運転するんですが、冬場になるとドアに触る時の静電気が怖くて、どうしたらいいんだろう?と、ずっと思っていたんです。地面に触ったり、帯電防止用の靴を履いたらいいのかなとか。でも静電気防止のグッズって効果があるのかちょっと怪しくて避けていて……。それが、昨年ネットで購入した小さいキーホルダーのおかげで、怖がらずにドアを開けられるようになったんです。

カーメイトのレジテック。青い部分が光り、電気を逃がしたことを教えてくれる。

使い方はシンプルで、キーホルダーの金属部分を握って先端をドアに押し当てるだけです。もし帯電していたらライトがピカッと赤く光って、電気を逃がしたことを教えてくれるんです。もう本当に助かっていて、お守りってこういうことかなって思います(笑)。

値段は600円くらいで安いですが、先端がゴムになっていて車を傷つけないことや、反応が目に見えてわかるところがいいですね。ダイソンの掃除機とかのように、ゴミが溜まったのが目に見えるとそれだけで頑張ってくれてるなって安心感というか。使うたびに「あ、私の身代わりになってくれてるな」と、感謝しています(笑)。

ネーミングもグッとくる、ハッピーセット

マックのハッピーセットのトムとジェリーシリーズです。すごく久しぶりに自分のためにハッピーセットを買ったんですが、すごくうれしくて、まさにハッピーな気持ちになりました(笑)。子どもの時は気付きませんでしたが、「ハッピーセット」というネーミングもすごいなと思います。

ランダムなのでどれが出るかわかりませんが、集めているという話をしたら「あげる!」と未開封のものを持ってきてくれたり、「子どもが持ってて、あげていいよーって言うから持ってきた!」と、友人たちが協力してくれてコンプリートできました。

全6種類のトムとジェリーシリーズ

いろんなシリーズが毎回出ているようですが、このトムとジェリーのシリーズもすごく単純なからくりでつくられていて可愛いし、基本は子どもが遊ぶものなので、ネジ穴とかも簡単に開けられないようになっていたり、分解して飲み込む危険性がないようにしっかり考えられているのだと思います。

おまけがついてくるってやっぱり魅力がありますよね。ランダムなところはガチャガチャとも少し似ていますけど、食べ物におまけがついてくるので、「おいしい」「楽しい」が一緒に味わえていいのかなと。小さい時に集めたこともうっすら覚えていて、長野五輪時のマクドナルドキャラのボブスレーフィギュアとか小さいバービー人形のものとか、思い出にやっぱり残りますよね。

あとは、この年になって「ハッピーセットください」って言えた、殻を破れた感がうれしかったですね(笑)。

“買い物”について

ホームセンターに行くのが好きで、珍しいものを見つけると思わずカゴに突っ込んでしまいます。好きが高じて、インスタグラムで「MY HOME CENTER」というアカウントをやっています。「この形いいな」「なんでこのパッケージにしたんだろう」など、気になったものを載せています。

台湾で展示があった際に、現地のホームセンターに行ったことがはじめたきっかけです。そこでは日本で見たことのないようなすごい量のペンキや、大きな木材だったり、その土地で標準として使われているものが置いてあるんだと気付いて、それからそこでしか見たことのないものがほしいなと思いはじめました。まだ海外のホームセンターには多く行けていませんが、将来的には世界中のホームセンターを回るような仕事がしたいですね(笑)。

■荒牧悠
慶應義塾大学政策メディア研究科修了。構造や仕組み、人の認知に注目した作品を制作している。おもな展覧会に「Research Portrait 01 チタン / 3Dプリンティング—マテリアルの原石」(東京大学生産技術研究所,2014)、「デザインの解剖展:身近なものから世界を見る方法」(21_21 DESIGN SITHT,2016)、「Ascending Art Annual Vol. 1 すがたかたち−『らしさ』とわたしの想像力−」(スパイラルガーデン,2017)、個展「ストゥラクチャ」(aiiima、2021)など。
https://harukaaramaki.com/

大西景太さん

音楽の構造や音の質感をアニメーションで表現する手法で、映像作品やミュージックビデオを制作する映像作家の大西景太さん。1月中旬に発表された「東京TDC賞2022」では、NHKの番組「名曲アルバム+」のために制作した『名曲アルバム+「レクイエム/カルドーゾ作曲」』がグランプリを受賞しました。そんな大西さんが2021年に買って印象に残ったものとは?

文字を楽しむ、カリグラフィーにまつわるアイテム

カリグラフィー専門店「ペーパーツリー」のサイトで購入した、カリグラフィー用のペンホルダーです。いろいろな種類がありますが、これは黒檀という堅い木材ででできたものです。

もともとドローイングは好きでしたが、TDCでグランプリをいただいた作品をつくる前から「何か文字を使ってみたい」と考えていて、カリグラフィーについて情報を得た感じです。基本的にデジタルで作品をつくっていますが、そればかりだと疲れてしまうこともあり、アナログな部分も取り入れたいなとどんどん興味を持っていきました。

写真下部が、黒檀のオブリークホルダー。そのほか、インクやインクを小分けにするインクウェルなども一緒に購入したそう。

ほかにも、カリグラフィーや文字に関する書籍も購入しました。ひとつ目は『カッパープレート カリグラフィー』というカリグラフィーの解説書です。本自体もとても美しい装丁で、角度を変えるとカリグラフィーで描かれたような模様がキラキラと浮かび上がって見えるんです。これはただの模様ではなくて、「フローリッシュ」というカリグラフィーの飾り線で描かれているのだと思います。

もうひとつは『アーティストの手紙』という、著名なアーティスト100人の手紙を集めた本です。ゴッホがゴーギャンにあてた手紙や、サイ・トゥオンブリーが書いた手紙とか、筆跡からアーティストの個性がわかる面白い1冊ですね。

(左)アーティストの手紙(右)カッパープレート カリグラフィー

あと、カリグラフィーつながりでジャケ買いしてしまったカセットテープもあります。「MONO EGYPT(モノ エジプト)」という現代エジプトのさまざまな音楽をフィールド・レコーディングした一品で、ジャケットがカリグラフィーペンで描かれているのかなと。タイトルの「モノ エジプト」は、単一のエジプトという意味だと思いますが、単一の線だけでピラミッドと街の風景を描いているところが渋いなぁと感じました。ちょっとアラビア語っぽい雰囲気もありますね。

カリグラフィーの技法で表紙が描かれた、「MONO EGYPT」のカセット

“買い物”について

買い物について何か決まった思想はありませんが、画材については新しくなると発想が変わるのでいいなと思います。特に普段コンピューターを使っていると機能にしばられてしまうこともあるので、ちがうものを試すというのは積極的に行いたいところです。

■大西景太
神奈川、東京を拠点に活動する映像作家。音楽の構造や音の質感をアニメーションで表現する手法を用いて、映像インスタレーション作品やミュージックビデオを制作。また CM、コンセプトムービー、モーション CI など広告表現やTVコンテンツ制作にも携わる。
https://www.keitaonishi.com/

カワイハルナさん

幾何形体を組み合わせた、独自の造形物を描くアーティストのカワイハルナさん。2021年はニューバランスのコンセプトストア「T-HOUSE New Balance」で個展を開催し、最近では本の装丁に作品が使われるなど、精力的に活動を行うカワイさんが2021年に買ったものをいくつかご紹介いただきました。

ずっと探していた、オーストリッチの消しゴム

高校生の時から趣味でずっと消しゴムを集めていて、ステッドラーやミランなど、いわゆる文房具のメーカーが出している消しゴムが好きなんです。昨年購入したのが、アメリカのオーストリッチというメーカーが出している消しゴムで、今回正方形のものを手に入れました。長方形と正方形バージョンがあって全部で6種類ですが、実はすでに廃盤になっているものなので超レアで、見つけた時はすごく感動しました(笑)。天然素材でつくられていて、ナチュラルな色味や質感が良いところです。

キャラメルみたいな色合いと形の、オーストリッチの消しゴム

消しゴムは1つの値段が150~200円とリーズナブルで集めやいのも大きなポイントですが、海外のものだとネオン系や乳白色の色が素敵だったり、有機的な形が魅力的だったり、MONOやステッドラーなど有名なものも時代によってパッケージやロゴの変化もあり、収集には飽きないですね。文房具の中でも大きな変化がないけど、ちょっとずつリニューアルしていたり、中の印字にこだわっているものなど、日本では見ないものも多く集めています。

オーストリッチの消しゴムは今回で全色コンプリートしましたが、コレクターの中には全種類持っている人がいて、まだまだ上には上がいます(苦笑)。それでも業者の人かな?と思うぐらいの数になっていて、コレクションはすべて、チェコのヒノールというメーカーの木の小物入れに保管しています。今回買ったものをご紹介するにあたり、レアな消しゴムの争奪戦が発生したら怖いなと思っていますが(苦笑)、共感してくれる方がいたらうれしいです。

カワイさんの消しゴムコレクション。国内外さまざまな形や色のものがヒノールの木の小物入れに保管されています。

同じ消しゴムでも、年代によってリニューアルされていることがわかります。

ロニ・ホーンの作品集「bird」

箱根のポーラ美術館で開催している、アーティストのロニ・ホーンの展示「水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?」を観に行った際に購入した、鳥の後頭部の写真ばかりを収めた作品集です。ひたすら鳥の後頭部が載っているだけなのですが、普段あまり注目しない鳥の後頭部の、肩があって妙に人間っぽい感じとか、おもしろい見え方が魅力的です。

ロニ・ホーンはアウトプットの仕方も作品によって全然違いますが、ひとつ芯があって着地点をいろいろ変えているのがすごいなと感じます。今回の展示も説明的ではないけれど、鑑賞者が拾えるものが多い、入り込める展示だなと思いました。自然光が入るところとか、外が森だったところも良く、わざわざ足を運んで見れてよかった展示です。

こういった作品集や展示からは、作品の見せ方を勉強するようにしています。額装の仕方や配置、ステートメントの文章などを見るようにしています。

ロニ・ホーンの作品集「bird」。なかなか注目する機会がない、鳥の後頭部がひたすら載っています。

“買い物”について

書籍は「ほしい!」と思ったら値段はあまり気にせず買いますね。特に作品集は展示を見たら必ず買うようにしています。あと、東京以外に遠出するときはその地域のリサイクルショップは必ず見るようにしていて、ほかでは見ない形の物を見つけるのが楽しくて、ついつい用途の分からない不思議な物を買ってしまいます。

■カワイハルナ
アーティスト。幾何形態を組み合わせた独自の構成物を描いている。展示を中心に、装幀画などのイラストレーションも手がけており、最近は立体物にも取り組んでいる。
https://www.instagram.com/haruna_kawai/

次ページ:2021年、なに買った?後編-高松直人さん、松田洋和さん

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