公正取引委員会は5月25日、2021年10月に開始した荷主と物流事業者との取引に関する調査の結果を発表した。
調査は、荷主と物流事業者との間の物品の運送又は保管に係る継続的な取引を対象として、荷主及び物流事業者向けの書面調査を実施。さらに、書面調査の結果を踏まえ、労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分の転嫁拒否が疑われる事案について、荷主19名に対する立入調査を実施した。
また、書面調査及び立入調査の結果を踏まえ、独占禁止法上の問題につながるおそれのあった荷主641名に対し、具体的な懸念事項を明示した文書を送付した。
<注意喚起文書を送付した荷主の業種別内訳>
<注意喚起文書を送付した荷主の行為類型別内訳>
問題につながる恐れのある事例として、「不当な給付内容の変更及びやり直し」を挙げている。これは、荷主が、物流事業者に対し、10時間以上の待機をさせたが、待機料金を支払わなかった(食料品製造業)。荷主は、物流事業者に対し、指定した配送先に誤りがあったことを理由に、別の配送先に配送をさせたが、追加費用を支払わなかった(道路貨物運送業)。
「代金の支払遅延」では、荷主が、社内連絡が滞ったことによる事務処理の遅れが原因で、物流事業者への支払が本来の支払月よりも1か月遅れた(家具・装備品製造業)。荷主は、自社が取引先から代金を収受するのが遅れたことを理由に、物流事業者への支払を遅らせた(総合工事業)。
「代金の減額」では、荷主は、物流事業者に対し、毎月の支払額から一律5%減じた金額を支払っていた(非鉄金属製造業)。荷主は、物流事業者に対し、毎月の支払代金に1000円単位の端数があった場合、この端数を切り捨てて支払っていた。(総合工事業)
「不当な経済上の利益の提供要請」では、荷主が、通関手続において発生する関税・消費税を荷主において直接支払わず、物流事業者に対し、立替払いをさせた(家具・装備品製造業)。荷主は、物流事業者に対し、「協力金」との名目で、数万円の金銭を提供させた(飲食料品卸売業)。
「買いたたき」では、荷主は、物流事業者から運賃の引上げを求められたが、ほかにも低価格で運送を行う物流事業者が存在するとして取引先変更の可能性がある旨通告し、引上げに応じなかった(窯業・土石製品製造業)。荷主は、物流事業者からの契約金額の交渉の要望を門前払いし、最初(40~50年前)に契約した金額を継続して据え置いている(設備工事業)。
今後の対応では、公正取引委員会は、今回の調査結果について、荷主・物流事業者を対象とする講習のほか、関係省庁・関係団体を通じて周知徹底を図り、違反行為の未然防止に向けた取組を進めていくとともに、違反行為に対しては厳正に対処していく。今後も引き続き、荷主と物流事業者との取引に関する調査を継続して実施していく、としている。
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