写真左から、熊本大学産業ナノマテリアル研究所の浪平隆男准教授、ジャパンシーフーズの井上陽一代表取締役(写真:浪平さん提供)
食中毒の原因となる寄生虫、アニサキス。近年、一般の消費者によく知られるようになったが、生魚を扱う水産加工業界にとっても大きな悩みの種だ。
消費者に安心して生の魚を食べてもらうためにも、確実にアニサキスを殺せる方法を見つけなければ――。水産加工場を営むジャパンシーフーズ(福岡市)の井上陽一代表取締役が目を付けたのは、熊本大学産業ナノマテリアル研究所(熊本市)の浪平隆男准教授が研究する電気エネルギー「パルスパワー」だった。
立ち上がった、アジの加工会社
「創業当初から我々にとってはアキレス腱でしかない」と井上さんが話すアニサキス。体長2~3cmほどの細長く白っぽい幼虫で、主に魚の内臓に寄生する。寄生した魚を生で食べると、その数時間後に腹痛などを起こすことがある。それがいわゆる「アニサキス症」という食中毒だ(関連記事)。
寄生する魚はサバやイワシ、アジ、サンマなど。その多くは刺身で食べると美味しい魚たちだが、見方を変えると、魚を刺身などに加工する水産加工業界にとって、アニサキスは厄介者以外のなにものでもない。
この厄介者と長年にわたって闘ってきたのが、井上さんが代表取締役を務めるジャパンシーフーズだ。創業35年ほどになる同社は、主にアジの加工品を大手スーパーに卸している。
アニサキス事故を起こすと、卸先との取引を停止されることもある。過去に同社はアニサキス事件を複数件出した月があり、そのときは月間の取引額が20%、金額にして5000万円が減ったという。
アニサキスはほかの食中毒の原因である細菌などと違い、魚の内臓や筋肉に棲みついている。
「O157などやウイルスなどは衛生環境を徹底的に整えれば防げる。しかし、アニサキスは原料の魚の搬入時点で身に潜ってしまっていたら、どうしようもない」(井上さん)
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