「被害者みたいな顔しないでほしいな」「非はお互いにあるんだから」
正介の言葉を聞いて、希依は怒りで頭がおかしくなるかと思った。
しかし、そんな希依の気持ちを知ってか知らずか、正介は平然と希依の背中へと手を伸ばし、トントンと優しく叩く。
馴染み深いその大きな手を、希依は振り払った。
「やめて。触らないで」
正介は、目をしばしばさせ、納得いかなそうに「なんで?」と言う。
「…怒るのは違くないか?俺が責められる言われはないよ。希依だって、想太ってヤツと何回か2人きりで会ってたんだろ?
俺、希依に忘れられない男がいるって知ったとき、どれだけつらかったか」
「だまって」
希依は叫んだ。
「正介が咲と関係を持たなければ、私は想太と再会することもなかったわ!」
自分にも非はあると、自分でも分かっている。
しかし、道を踏み外しかけたが、自分の判断で引き返してきたのだ。
最終的に想太を振ったのだという自覚が、希依の自信になっていた。
「私も悪かったけど、正介のほうがずっと最低よ。何より、私は不貞行為はしてないんだから」
語気を荒らげる希依の顔を、正介は、面倒そうに見つめる。
「正介はずっと咲に夢中で、身を引こうとも思わなかったんでしょ?あなたたち、一体何回…」
― 一体何回、寝たの…?
想像したら身の毛がよだち、あわてて言葉を引っ込める。
― ああ、もう。こんな目に遭うなんて…。
正介は咲のどんなところに惹かれたのだろうかと、希依はモヤモヤした。
自分より咲が選ばれる理由がわからず、釈然としないのだ。
かすれた声で、恐るおそる聞く。
「…なんで、正介は咲と関係を持ったの?私より咲がよかった理由は?」
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