日本製紙は繊維幅をナノからマイクロ級まで自由に設定できるセルロース繊維「ミクロフィブリル化セルロース(MFC)」の普及に向け、顧客が扱える製造装置を開発・販売する。オンサイトで容易に解繊でき、用途に応じ透明度や粘度が違うMFCを作り分け可能とする。MFCは強度と軽さを両立し、環境適合性を持つ。塗料や肥料など噴霧型製品への適用も訴求していく。
日本製紙は従来、微細で強度や軽さに優れる新素材、セルロースナノファイバー(CNF)を手がけるが、高機能だけに慎重な扱いが必要で価格が高い。
MFCはCNF向けのTEMPO酸化パルプ(変性パルプ)などを原料としつつ「CNFほど高機能でなくてよい」「低コストで中程度サイズの素材を」などの声に応える。
CNFが透明度85%以上、粘度6000ミリパスカル秒程度である一方、今回開発したMFCは透明度は1―85%、粘度は最大5000ミリパスカル秒程度。
MFC投入で顧客への供給スキームも多様化させる。CNFと同様、同社から素材として供給するケースのほか、顧客が製造装置を使って原料パルプを解繊しMFCを生産できるケースを想定する。
当面はMFCのサンプル品を、富士工場(静岡県富士市)に設置した専用マシンで生産する。粘度や透明度、保水度、ゲル感などを用途ごとに変えられるほか、機械自体がコンパクトな設計で持ち運びと組み立てが容易。日本製紙はこれを基に顧客がオンサイトで使える装置を開発する。
MFCは各種工業用配合材、食品・化粧品添加剤への利用が見込まれる。成膜性や吸水性のほか、撒きやすい、垂れにくいなどの特性を生かし噴霧型製品への適用を提案する。同社はMFCの関連技術を特許出願済みだ。
CNFは一般的に1キログラム当たり10万円程度と高価。需要が増えれば量産でコストダウンも見込めるが、現状は黎明期。MFCを手がける企業は他にもあるが、機械の販売、オンサイト対応を進める企業は例がないという。
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