2020年4月7日、Shopify Inc.と楽天株式会社が、日米のShopify利用店舗に向けて、Shopify管理画面上で楽天市場での店舗運営を可能にするサービスを開始したことを発表した。今回の連携は、どのようなメリットがあるのか、なぜこのような連携が実現したのか、Shopify Japan マーク・ワング氏と、楽天株式会社 藤屋 俊介氏に伺った。
なぜShopifyと楽天が?連携により実現したこと
この度、Shopifyと楽天の連携により、Shopifyを利用する米国と日本のネットショップは、Shopifyの管理画面上で楽天市場の店舗運営が可能となった。
Shopifyの利用店舗は、Shopify専用アプリ『楽天販売チャネルアプリ』を利用することで、楽天の店舗運営システムであるRMSにアクセスすることなく、Shopifyの管理画面上で、楽天店舗の商品登録、在庫管理、受注・発送連絡など、日々の運営業務を行える。
Shopifyは、自社オンラインストア構築・運営や複数EC販売チャネルでの店舗運営を支援するマルチチャネルコマースプラットフォームだ。世界約175カ国、100万店以上で利用されている。日本でも認知が進み、多くのメディアにも取り上げられている。そんなShopifyが、今回なぜ、楽天との連携を選んだのだろうか。
マーク:Shopifyはオムニチャネルのプラットフォームです。私たちが大事にしているのが、Shopifyのマーチャントが、あらゆるチャネルで販売ができるということです。今回の連携は、アメリカのマーチャントに対して、日本という市場を開くことになります。
日本のEC市場は、中国、アメリカ、イギリスに次ぐ世界第4位の規模です。そこにアクセスできるということは、大きな意味があります。そして楽天市場は、日本のEC市場のなかで最大級のオンラインショッピングモールです。その顧客にリーチできるのは、私達のマーチャントの売上向上に大きな効果があります。
ーーー一方、すでに日本で確固たる経済圏を持ち、海外進出も行っている楽天にとって、Shopifyと連携する意味はどこにあるのか?
藤屋:弊社では2017年から、米国の企業が楽天市場に出店できる仕組みを整えてきました。しかし、楽天のシステム、RMSは米国の企業にとってなじみのないものです。英語に対応できていないこともあって、日本進出の障壁となっていました。しかし、今回の連携によりShopifyの管理画面上で楽天市場の登録業務が完結します。その結果、今まで楽天が抱えていた米国企業におけるシステム面の障壁が軽減されたと考えています。
また、日本のShopify利用企業は、簡単に楽天市場へ販路拡大ができるようになりました。すでに楽天市場とShopifyの両方で店舗を運営されている場合も、『楽天販売チャネルアプリ』により、Shopifyの管理画面上で両店舗の運営を行えるようになっています。
Shopifyと楽天に共通する哲学とは
ーーーShopify、楽天の両社、そして両サービスの利用店舗にメリットがあるとはいえ、今回の連携に関しては、驚いたという反応が多い。Shopifyと楽天はどのような共通項があり、提携に至ったのだろうか。
マーク:私たちは、「すべての人々のコマースをよりよくする」ことをミッションとしています。そして、それを実現する方法として、Shopifyというソフトウェアサービスを提供しています。Shopifyは、コマースにおけるOSのようなものです。プラットフォームや決済を一元管理するようなことはせず、独立性のある環境を提供しています。
一方、楽天市場は日本最大級のマーケットプレイスです。一見、Shopifyとはまったく違う哲学に基づいているように見えるかもしれません。しかし、ブランドを支え、消費者に対してよりよい場を提供することへの哲学の部分に関しては共通していると考えています。ただ、そこに至るまでの道筋が違うだけなのです。
藤屋:楽天創業の原点には、地方の商店街にシャッター通りが増えるなかで、全国に対して商売ができる場所を提供したい想いがありました。楽天市場は、店舗ごとに見た目も、マーケティング手法もさまざまです。店舗さま自らが成長できるプラットフォームであり、それとともに楽天も成長していきたいという考えが基本にあります。そこがShopifyと共通していたのだと思います。
2年をかけた構想、そのきっかけ
ーーー今回の連携のためのシステム開発が始まったのは、2019年7月。6ヶ月強の期間がかけられた。しかし、Shopifyと楽天の協業自体は、それよりももっと前、Shopifyが日本に進出した2年前から検討が進められていたそうだ。
マーク:日本市場に進出するにあたり、楽天は、楽天市場という日本最大級のマーケットプレイスに加え、決済、物流、マーケティング、金融など、エコシステムとして非常に重要な存在でした。また、楽天がグローバルに拡大しようという志を持っていたことも重要でした。Shopifyは世界各国、多数のマーチャントとビジネスを行なっています。楽天との連携によりマーチャントには付加価値を提供できますし、楽天にとってもメリットがあると考えました。
また当初は、楽天市場以外のサービス連携の案もあったそうだが、最終的に、まずは楽天市場を連携させることになったという。
藤屋:2017年にはじめてマークさんにお会いしたのですが、協業についてさまざまな提案があり、双方のビジネスをスケールするにはどうすれば良いのかを議論しました。そのなかで、弊社のビジネスの大きな割合を占めており、当時から海外ブランドの獲得に積極的に取り組んでいた楽天市場を掛け合わせることで、大きなシナジーを得られるのではないかという結論に至りました。
新たな一歩を踏み出したShopifyと楽天の今後は
マーク:Shopifyを利用しているマーチャントにもっと成功してほしいという想いを強く持っています。今回の連携により、アメリカのマーチャントはこれまでより簡単に、日本のEC市場にアクセスできるようになりました。また、日本のマーチャントにとっても、楽天市場の顧客にアクセスできるようになったというのは非常に大きいことだと思います。
藤屋:今回の連携は米国と日本のShopify利用店舗を対象としたものですが、Shopifyはヨーロッパでも多く利用されています。そういった地域のブランドの誘致や、楽天市場でニーズの高い韓国コスメブランドを誘致できるよう、Shopifyさんの韓国の事業との連携も検討の価値があると思います。また中期的なところでは、日本以外で展開している楽天のマーケットプレイスとShopifyを連携することも、もちろん視野に入れています。
ーーー最後に、今後、Shopifyが日本で他のマーケットプレイスと連携する可能性はあるのだろうか。
マーク:マーチャントのためにあらゆるチャネルを使えるようにしたいというのが私たちの考えですから、可能性はゼロではありません。とはいえ、それには多額の投資を伴いますし、シームレスな連携を実現するための技術開発も必要です。それだけの、マーチャントに対する価値と、両社にとっての価値が提供できてはじめて連携が実現します。
楽天市場との連携は、それだけの価値があったということです。今回、楽天という巨大なエコシステムと協業することで、Shopifyをより良く変化させていけると考えています。今後、楽天市場以外の楽天のサービスとの連携や、日本以外の国・地域での展開など、まだまだ可能性があると考えています。
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