子育て食についての本を著した小児科医の伊藤明子先生は、子どもの発達障害の研究とビタミンDの研究をしているドクターでもあります。そこで今回は、ビタミンDの働きと健康の関係について、お伺いしました。
ここ10年で増え続けている子どものビタミンD欠乏症
日本の0~15歳の「ビタミンD欠乏性くる病」と診断された子どもの数がここ6年で、3倍以上増えています。原因は2つ、太陽光を浴びていないことと、動物性タンパク質の摂取不足ではないかと考えられています。
近頃の保護者のかたは、太陽によるシミ・シワを嫌がったり、皮膚がんリスクをおそれるあまり、お子さまが日光浴するのを避けたり、かつ日焼け止めをしっかりと塗布するかたが多く見られます。これに加えて、卵や魚などの動物性タンパク質の摂取量が少ないと、「くる病」のリスクはどんどん高まってしまいます。
「我が家は、日光浴させています」というかたの場合も注意が必要で、保護者のかたが子ども世代だった当時は、例えば、冬場は1時間日光にあたっていればビタミンDが生成されると言われていましたが、現在では温暖化などの地球の環境の変化により、東京以北では十分ではないことが、環境省の発表で明らかにされています。
ビタミンDは体全体に関わる要素
ビタミンDが不足しているのは、子どもだけではありません。
日本では、まだ大人のビタミンD欠乏に関する正式がデータは発表されていませんが、日本と似たようなライフスタイルで暮らす韓国では、調査対象の7割超がビタミンD欠乏症だったというデータがあります。私のクリニックに不調を訴えていらっしゃる患者さんの血液検査をすると、およそ9割のかたがビタミンD欠乏症であることがわかります。実感としては、日本でも同じくらいのビタミンD欠乏症のかたがいるのではないかと思っています。
ビタミンDは骨だけではなく、全身にかかわる要素なので、皮膚や免疫、メンタルやがんにも関係しています。ビタミンDの数値が低い人は、女性の場合は乳がん、男性の場合は前立腺がんのリスクも高いということもわかっていますし、結核などの感染症にもなりやすいのです。
また、メンタルの面でも、うつや精神疾患との関係も研究で出ており、ビタミンDの数値が低いお子さまに発達の課題がある子が多いことや皮膚トラブルが多いことなどを示す研究もあります。
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