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Monday, December 13, 2021

気候変動で脚光 カーボンオフセット ってなに? - 日本経済新聞

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2050年に地球温暖化ガスの排出をゼロにする目標に向けて、政府や企業は太陽光や風力など再生可能エネルギー開発・導入といった脱炭素投資を加速している。だが、当面は石油やガスなど化石燃料を使い続けるしかない。ジレンマを抱える多くの企業が温暖化ガス排出を「実質ゼロ」にする有力な手段として熱い視線を送るのが「カーボンオフセット(相殺)」だ。

カーボンオフセットの仕組みは2つある。

まず、欧州連合(EU)で広まった排出量の上限を決めた規制に基づく「排出量取引制度(ETS)」だ。電力や鉄鋼、石油精製など規制対象業種の企業ごとに排出上限を割り当てる。その上限を超過した企業が、上限に達していない企業の余裕分を公的市場を通じて買う。これで自社の超過した排出量を「無かったこと」にして、課徴金を免れることができる。「キャップ・アンド・トレード」とも言われ、EUのほか韓国、英国なども導入している。

もうひとつが二酸化炭素(CO2)の削減量をベースにした「カーボンクレジット」。ETSのような排出量規制の上限を基準にしたものではなく、企業・団体が省エネや脱炭素に取り組んでCO2を削減した分をクレジットにして売る。いわゆる削減量取引だ。クレジットを買った企業・団体はその分だけCO2の削減量を上積みしたことにでき、排出量を埋め合わせたとアピールできる。売買するクレジットに排出削減分の価値があるとお墨付きを与えるのは国や自治体、民間認証機関だ。総じて国や自治体のほうが審査基準が厳しい。

クレジットを生み出す手法は様々。代表的な手法は森林の保全や植林だ。これで空気中のCO2を吸収する量を増やせば、その分だけCO2を削減したとみなせる。省エネ技術の導入でもクレジット発行は可能。最近は排出されるCO2を集めて地下に埋めるやり方もある。売り手はクレジットの売却で得た資金を将来の環境事業に回せば、温暖化ガス削減効果は一段と高まる。

注意が必要なのは、国や自治体が認める公的クレジットと民間認証クレジットで取り扱いが異なることだ。民間認証クレジットはEUの排出量取引制度のような公的クレジット取引の対象外で、オフセットの手段として公式に認められない場合が多い。このため多くはブローカーを通じて民間で取引されている。

民間認証クレジットを積極的に買っているのは、航空や石油などCO2の削減余地が小さい業界。「実質排出ゼロ」に向けた取り組みとしてアピールできると考えているからだ。オフセットに使わなくても、排出削減への貢献の一環として購入する企業もある。民間認証クレジットが売買される市場は「ボランタリー市場」と呼ばれ、年々活発になっている。

民間クレジットの取引量は2017年の4660万トンから21年は8月までの累計で2億3930万トンに拡大。このうち森林由来のクレジットが最も多く、すでに20年比2倍以上の1億1500万トン分に達した。

森林事業からクレジットが生まれる仕組みにはいくつかの類型がある。わかりやすいのが植林・緑化だ。森林がない地域に植林などで恒久的な森林を造り出して、その吸収分をクレジットとして販売する。

もう一つは森林減少・劣化の防止だ。発展途上国で焼き畑や林業などを営んでいる住民に他の生業を用意するなどして森林破壊を防ぎ、本来排出されるはずだったCO2の削減分をクレジットとして販売する仕組みだ。

森林クレジット事業は世界中に広がっている。認証機関最大手の米ベラ(Verra)が認めたクレジットを発行している事業は21年時点で200件以上ある。南米やアフリカ中部、東南アジアなど熱帯雨林がある地域が多い。その中で発行量が最大なのがインドネシアのボルネオ(カリマンタン)島で実施されているカティンガンの森林保護事業だ。

米団体ベラ運営の「VCS」が有力に

森林クレジットを含むボランタリー市場の認証機関は複数あり、ベラが認めるVCSのクレジットが最も多く流通している。

実際に企業や個人がクレジットを購入したい場合は、事業実施団体から購入できる。直接購入するルートに加え、環境関連のコンサルティング会社や、個人向けのスマホアプリなどを通じて取得する方法もある。航空会社がマーケティングの一環として、自社が仕入れたクレジットを利用客に販売するケースもある。

VCSクレジットの20年の平均価格は排出量1トンあたり2ドル程度で、EU排出量取引の10分の1以下だ。現時点ではあくまで自主的な取り組みで、公的な排出量取引などに利用できないことが、価値向上の重荷となっている。

クレジットの質は玉石混交

森林クレジットは、各事業の実施団体がベラのような認証機関に依頼して内容を認めてもらい、価値が保証される仕組みだ。だが、ベラだけで200以上に上る森林保護事業を、十分に監視できているか疑問も残る。

森林クレジット事業では、何もしなければ破壊が進むとみられている森林を保護して森林量を維持し、CO2が吸収されたとみなす。そのため事業開始前にあらかじめ森林減少量をより大きく見積もれば、クレジットをより多く発行できる。意図的に減少量を大きく予測することで、クレジット発行量を水増ししていると疑われる事例もある。

温暖化ガス排出ゼロを実現するにはオフセットの活用は避けられないとみられる。森林保全によるオフセットの考えそのものは有用だが、クレジットの信用に疑念が生まれると、制度普及の足かせになりかねない。市場の健全性を維持する取り組みが不可欠だ。

記事  朝田賢治、宗像藍子、兼松雄一郎、石橋茉莉、西城彰子
グラフィックス  佐藤季司

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