朝ドラ「舞いあがれ!」の舞や柏木と同じ時期に“航空学校”へ入学したパイロットの卵たち。
入学から4カ月がたち、念願の帯広での初フライトまで残りわずかと迫った学生を取材しました。
残り1カ月。宮崎本校の思い出
話を聞いたのは、航空大学校69回生Ⅰ期の石井雄士さんです。7月に入学してから4カ月が経過し宮崎での学科課程も1カ月をきっています。
勉強は同時並行で15科目以上があって、中間チェックとかのテストも毎週のようにあって、効率性が求められるので、科目ごとに得意な人に教えてもらっていました。宮崎には帯広から戻ってきた先輩もいるので、フライト課程のことを聞くと、限られた期間でライセンスを取得しないといけなくて、座学以上に1人では超えられない壁が沢山あるらしくて…。同期と情報を共有して、いっしょに頑張っていくことが大事っていうのは教わっています。
実は、勉強とは別に石井さんの回期では航空大学校史上、初めてのことが起こったそうです。
それはリモート授業の導入。70年近い航空大学校の歴史でも初めての試みだそうです。リモート授業の導入は後輩の回期からなので石井さんたちには関係がないと思いきや、関係があるようです。
これまで寮の掃除やゴミ捨てなどといった雑用は座学生が担当していたんですが、それをどうするかを私たちで考えています。私たちがいる間は自分たちでするんですが、私たちが学科課程を終えて宮崎を出ていくと何も知らない後輩と、フライト課程の先輩方だけになってしまうので。
石井さんたちは、フライト課程で忙しい先輩の負担が少しでも減るようにと、掃除やゴミ捨てなどの雑用を動画にしてまとめて「How to」として後輩に引き継ぐことなどを検討しているそうです。
授業が終わっても勉強“紙レーター”とは?
石井さんたちが生活をしている寮を見せてもらいました。すると学生の机の多くにコックピットを模した紙が貼られています。
これは「紙レーター」って呼んでるんですけど「紙」と「シミュレーター」を掛け合わせた造語です。別にパイロットへの憧れで学生が貼っているのではなくて(笑)、フライトの手順を勉強するときに実物が目の前にあった方がイメージしやすいので、理解が深まるんです。付け焼刃の知識だと手順が間に合わないので、覚えるというよりは、体に染みこませる感覚です。
航空大学校の学生は、石井さんの次の回期から始まるリモート授業の2か月以外は、全員が寮に入るといいます。これも航空大学校の昔からの伝統ですが、共同生活を送ることで同期の絆が深まるのはもちろんですが、「エアマンシップ」という人間性の成長につながっているといいます。
瀬川教官(航空大学校フライト教官)
パイロットは操縦の良し悪しだけではなく、航空業界では「エアマンシップ」というんですが、コンプライアンス、モラル、向上心を持つこと、素直さ、謙虚さ。すべてがパイロットに必要な要素になっています。操縦技術や学力だけではなくて、コミュニケーション能力や洞察力や忍耐力とか体力とか人間としてのバランスを共同生活で培ってほしい。
パイロットへの夢
航空大学校に入るまでは、4年制大学の航空宇宙に関連する学科で流体力学を専攻していたという石井さん。
大学時代はグライダー部に所属していました。空を飛ぶ部活なので、舞ちゃんの人力飛行機サークルと感覚は通じる部分もあるかもしれないです。
朝ドラを見ていて、舞ちゃんの言葉で「憧れだけじゃなくて、人の思い…人力飛行機を作ってくれる人たちの思いを背負って、その覚悟で飛びたい」という思いが非常に共感できるなと思いました。
私がパイロットになりたいと思った理由が、小学生のときに日航機墜落事故の番組を見ていたことがきっかけだったので。当時のコックピットの音声をきいて、パイロットたち3人が最後まで諦めていなかった姿勢に感銘をうけて、そこから憧れだけでなくお客様の安全をしっかり守って、目的地まで送り届けることの大切さを知って、パイロットになりたいと思いました。
初フライトへの思い
石井さんたちは、いよいよ飛行機を飛ばすための手順である「プロシージャー(※)」を学びはじめているそうです。
※プロシージャー…飛行機の操縦席に乗り込んでから降りるまでを安全に行うための手順。パイロットはこれを声に出しながらチェックしていきます。
「プロシージャー」を勉強していると、いよいよこれから空を飛ぶんだなという楽しみが半分で、あとは手順で覚えることがとても多いので不安が半分という感じです。これからプロのパイロットになるために、自分の腕を磨くのを楽しみたいなという気持ちです。
同期と夢を叶えるために努力を続ける石井さん。寮の部屋は早くも帯広に向けて準備が整っています。
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