[ワシントン 27日 ロイター] - 米民間経済研究所コンファレンス・ボードのチーフエコノミスト、ダナ・ピーターソン氏は、同研究所が算出する景気先行指数の急落を見て「景気後退はまだ始まっていないとしても、もうすぐ始まる」と結論付けた。
しかしバージニア州の住宅サービス会社、グラウンドワークスの事業は好調だ。最高経営責任者(CEO)のマット・マローン氏は、しばらく前から不況がやって来ると言われてきたが、ビジネスにまだ影響は出ていないと語る。
世界を混乱に陥らせた新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)発生から3年、またこの1年半は物価高が急速に進み景気後退観測が高まったが、そうした悲観的な見方は「肩透かし」の感があり、米国経済そして世界経済の謎は深まるばかりだ。
<成長は続く>
1月の米失業率は3.4%で1969年以来の低水準。米連邦準備理事会(FRB)は景気後退よりも雇用の引き締まりを懸念する。
クリーブランド地区連銀のメスター総裁は24日、CNBCのインタビューで、今年の経済成長は「トレンドを大きく下回る」ものの成長はすると予想。
一部セクターは減速しているものの、「今年に入り予想以上に底堅さが出てきた」と指摘。「(企業は)これまで苦労して人材を確保してきたので、それを維持しようと努力するだろう。この減速局面を乗り越えれば、必要な人材を確保していることになる」と述べた。
こうした底固さは米国だけの話でない。ユーロ圏や英国も温暖な気候、エネルギー価格の軟化が寄与し、個人消費は予想外に好調だ。中国でゼロコロナ政策が撤廃されたことも世界経済の見通し改善に一役買った。
コンファレンス・ボードのピーターソン氏も「奇妙な状況」と認める。「企業は雇用を継続し、人員削減は考えていないと話している」とし、たとえ米国が景気後退に入ったとしても、短期で浅いものになる可能性が高いとみる。ただ最終的には「消費者が鍵を握る」と言う。
コンファレンスボードが発表する主要指標は、1年ほど前から景気後退の警告を発している。米国債市場では、典型的な景気後退シグナルとされる逆イールドが続いている。
小売最大手ウォルマートの幹部は最近の決算会見で、販売は好調だが、家計のやり繰りが厳しくなっている兆しがあると指摘し、比較的所得の高い層によるバーゲン品購入を一例に挙げた。
<インフレをどう抑えるか>
しかし、景気後退の予兆がある中でも消費や雇用が順調で景気が拡大し続ければ、FRBをはじめとする主要中央銀行としてはインフレ問題に取り組まなければならない。
FRBのインフレ抑制最優先の姿勢に市場は長い間懐疑的だった。しかし、経済の底固さ、インフレの粘着性を示すデータを受け、ようやく同調するようになったようだ。それを示唆する最近の債券利回り上昇を見て、パイパー・サンドラーのグローバル・アセット・アロケーション責任者のベンソン・ダーラム氏は、FRBの利上げはまだ続くと予想する。
3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の決定を占う上で、今後数週間に発表される雇用・物価指標が重要になる。
ただインフレ高止まり、利上げ観測は、想定外の強さを見せる経済の証左との見方もある。FRB幹部も景気を冷やさずインフレを抑制できるとみている。
セントルイス地区連銀のブラード総裁は先週、市場は景気に過度に悲観的だったと指摘し、「米経済は6─8週間前の市場予想よりも耐性があるように思える」と述べた。
(Howard Schneider記者)
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