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Friday, January 19, 2024

月面着陸を断念した「ペレグリン」、一体なにが積まれていたの? - GIZMODO JAPAN

apaituberita.blogspot.com

1月8日に打ち上げられたAstrobotic(アストロボティック)社の月着陸機「ペレグリン」

さまざまな ペイロード(積載物)を乗せ、商業宇宙輸送の時代の到来を告げるミッションとなるはずでしたが、打ち上げ直後のトラブルにより月面着陸は断念。現在は惑星空間のデータ収集を行なっています。

打ち上げには成功したものの…

ペレグリンは東部標準時の1月8日(月)午前2時18分(日本時間同日の午後4時18分)に、フロリダ州にあるケープ・カナベラルからユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)の「ヴァルカン・セントール」ロケットで離昇しました。

他の天体に着陸する史上初の民間宇宙機、そしてアポロ計画以来初めて月にタッチダウンする米国の宇宙機として歴史に名を残そうとしていた同着陸機。しかし打ち上げには成功したものの、分離後に推進剤が失われるというトラブルに見舞われ、2月下旬に予定していた月面への着陸を諦める事態に。

月は降り立つのが極めて難しく、これまでに数多くのミッションが失敗に終わっています。

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Image: Astrobotic
ペレグリンのコンセプト図

ピッツバーグに本社を置く、Astrobotic社が製作し運用する重量1283kgのペレグリンが軟着陸を目指していたのは、グルイテュイゼンと呼ばれる小さなクレーターに隣接するSinus Viscositatis(粘りの入江)という領域。

このドーム地形は特異な地質学的特徴をもつことで注目されており、その成り立ちと化学組成の解明も数年後に計画されています。

月への配送をNASAから委託

ペレグリンには政府と民間パートナー両方からのペイロードが積み込まれていました。

アルテミス計画の一環であるNASAの商業月面輸送サービス(CLPS)は、米国企業の各社と提携して月に科学的及び技術的なペイロードを輸送するというもの。CLPSは2028年までの期間で契約金の総額が26億ドル(約3,815億円)となっていて、これらの企業はペイロードの統合から月面着陸までの責任を負っています。

Astrobotic社と同じく、2024年内に月着陸機を送る予定のIntuitive Machines(インテュイティブ・マシーンズ)社は月着陸機を打ち上げる契約をそれぞれNASAと、7950万ドル(約116億円)及び7700万ドル(約113億円)で結んでいます。

このような協力体制の目的は、NASAの進行中の月探査ミッションと今後の有人月面ミッションの準備を、コストを抑えつつ支えること。アルテミス計画の主要目標は、月を人類の長期的な駐留のための持続可能な場所かつ、将来の深宇宙探査の出発点にするというものですからね。

CLPSは、NASAが宇宙探査の商業的なパートナーシップを育てるために立ち上げた数ある取り組みの1つで、このビジョンはAstrobotic社のPeregrine Mission One(PM1)でもって大きく前進するはずでした。

ペレグリンに積載された20個以上のペイロードには多様な科学機器やテクノロジー、思い出の品々などが含まれていました。NASAのペイロードも結構ありますが、米国以外の6カ国、数十の科学チーム、数百名の個人からのペイロードも。ほとんどが科学的な目的を持っていましたが、明らかに科学的でないものもありました。

NASAが資金援助したミッションというわけで、まずはNASAのペイロードから見ていきましょう。

月に輸送されるNASAの機器類

このミッションは月への理解を深めるため、NASAが所有するさまざまな種類の科学機器を搭載していました。

NASAのレーザー・レトロリフレクター・アレイ(LRA)はレーザー光を使って月と地球との正確な距離を測定し、線エネルギー付与分光計(LETS)は月面の放射線を測ることで、将来のミッションでの宇宙飛行士の安全性を高めるという機材。

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この写真が示すようにNASAのナビゲーション・ドップラー・ライダー(NDL)は2017年のCOBALTプロジェクトでテストされましたが、このたび月で試すことに
Photo: NASA

近赤外揮発性分光計システム(NIRVSS)は月面を分析し水や他の物質を特定し、ペレグリン・イオントラップ質量分析計(PITMS)は外気圏の組成を調べるもの。NASAによるとナビゲーション・ドップラー・ライダー(NDL)は、「正確な高度、速度、方向のデータを誘導・航法・制御サブシステムに提供して、Astrobotic社のペレグリン月着陸機の月面への安全な着陸を確実にする」機器だったそう。そして、中性子スペクトロメータ・システム(NSS)は地表近くの水素を含む物質を測定して、潜在的な水源を示すもの。

こういったツールが合わさって月探査と居住可能性への大きな一歩となるはずだったのです。

NASA以外の機器類

メキシコとドイツからは、科学プロジェクトも積まれていました。

メキシコが初めて月へ送るミッション「Colmena(コルメナ)」は、5台の超小型な群ロボットが1枚のソーラーパネルを自律的に組み立てるというもの。

ドイツの「M-42放射線検出器」は月への旅行中と月面にいる間の宇宙放射線の量を測定して分析し、今後の有人月面ミッションの安全性と実現可能性を評価するうえで欠かせないデータを提供するとのことでした。

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Image: National Autonomous University of Mexico (UNAM)
メキシコが開発した5台ある超小型ロボットの1つのクローズアップ画像

カーネギー・メロン大学で開発された約2kgの月面ローバー(月面を走る車)「Iris(アイリス)」は靴箱ほどの大きさ。このローバーの役目は機動性を示し、地質科学のために画像を撮影。無線を使った位置測定技術を試すことで、月面で稼働する米国初のロボットとなるはずでした。

Irisミッションの担当者Raewyn Duvall氏は同大学のリリースの中で、「数百人の学生がIrisに何千時間も注ぎ込みました」と語っています。

私たちはこのミッションに向けて何年間も頑張ってきました…。いつかIrisは、学生たちによって組み立てられた小さくて軽量なローバーが月上で成功できると証明し、月と宇宙の探査に役立つでしょう。

カーネギー・メロン大学はタイムカプセルも載せていました。重量がおよそ230gの「MoonArk(ムーンアーク)」は4つの空間から成っており、何百もの画像、詩、音楽、ナノオブジェクトや地球からの試料など多方面にわたる品々のコレクションを運んでいました。

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Photo: Carnegie Mellon University

ペレグリンにはアーチミッション財団の「Library II」という、6000万枚分以上の情報が詰まったディスクも積載されていました。その内訳は英語版ウィキペディア、インターネットアーカイブからの精選されたデータ、5000言語への言語学的な手がかり、あらゆる個人コレクションなど。

このライブラリーは、Astrobotic社が「超耐久性のあるアナログのナノ記録媒体」と謳うNanoFiche™に印刷されていました。

DHL MoonBoxは写真、小説、学生のプロジェクト、さらにはエベレスト山から採った砕片などさまざまなアイテムが詰め込まれたカプセル28本を収容しています。

ハンガリーのMemory of Mankind (MoM) on the Moonは記録画像と文書が入った銘板ですが、未来の月探査者が読み解くには10倍拡大鏡が必要なんだそう。

そのほかにも、Astroscale Japan(アストロスケール)社の「ルナ・ドリーム・カプセル」によるメッセージが刻印されたチタンプレート(とポカリスエットの粉末)や、Lunar Mission Oneによるデジタルアートと音楽のギャラリーが月に運ばれる予定でした。

月面葬

宇宙葬サービスの企業Elysium Space(エリジウムスペース)社とCelestis(セレスティス)社も、故人の遺灰を深宇宙と月面に送るためヴァルカンの打ち上げに相乗りしていました。

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Photo: Celestis Inc.
微量の遺灰が入った宇宙行きのカプセル

追悼される人物の中には、かの有名なSF作家アーサー・C・クラークの名前も。Celestis社のペイロードには彼のDNAや、『スター・トレック:宇宙大作戦』の出演者と生みの親ジーン・ロッデンベリーの遺灰も。

Elysium Space社の月面葬サービスは、故人を追悼するユニークで贅沢な方法として、故人の遺灰が入ったカプセルを積載していました。

仮想通貨にまつわるペイロードも

月へのミッションには取引プラットフォームBitMex(ビットメックス)とBitcoin Magazineのおかげで暗号通貨のペイロードも積まれていました。

BitMexのリリースによると、このプロジェクトは秘密鍵が刻まれたビットコインのレプリカを月面に残して、「未来の探査者に回収されるのを待つ」というものなんだとか。

このミッションには、ビットコインのジェネシスブロック(ブロックチェーンの最初のブロック)のテキストとBitcoin Magazineロゴのホログラムが記録されたメタルプレートも積まれていました。

そんなわけで、科学的な発見や探査のため以外の荷物も詰め込まれていたペレグリン月着陸機。Astrobotic社の最新アップデートによれば、現地時間の1月18日に地球の大気圏に再突入して燃え尽きるようです。

Source: NASA(1, 2, 3, 4, 5, 6, ), Astrobotic(1, 2, 3, 4, 5,), NASA Space Science Data Coordinated Archive(1, 2, 3) ESA, The Robot Report, DLR, IRIS LUNAR ROVER, Carnegie Mellon University(1, 2), MoonArk, Leonard David's INSIDE OUTER SPACE, Astroscale Japan, Lunar Mission Gallery, Bitcoin Magazine, BitMEX, NASA blog,

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