Text by Ben Golliver
ディズニーワールドで隔離なんて楽しそうと思った人もいるかもしれないが、ここは新型コロナのホットスポットとなっているフロリダ州。厳重なルールが課され、その生活において自由は制限されている。当然、中で取材できる記者もごくわずかだ。その貴重なパスを手に入れた米紙「ワシントン・ポスト」のNBA番記者が滞在の様子を公開。
フロリダ州キシミー──何百ヤードか先にある噴水は、ジメジメとした空気の中に水を高く噴き出しながら、私をあざけり笑っているようだ。その光景を、たったひとつだけの窓、開くことのない窓越しに眺めている。これが、木々にはばまれながらも、なんとか見ることのできる光景だ。
午後に予定されている新型コロナウイルスの検査と、朝昼晩と食事が運び込まれる時以外はホテルの部屋のドアが開くことはない。
私は、ディズニー・ワールド内のバブル(隔離地域)でシーズンを再開するNBAを取材しようとしている。契約上の規定で噴水のそばを歩き回って試合をレポートするためには7日間の厳重な自己隔離が必要なのだ。この隔離が終わるまでは、ホテルの廊下にある製氷機にも行くことができない。
このホテルの部屋で過ごす時間が長くなるごとに、シャーロット・パーキンス・ギルマンの短編『黄色い壁紙』についてじっくりと考えるようになった。子供部屋に閉じ込められた主人公が、妄想に陥り、彼女自身が薄汚れた壁紙の向こう側にとらわれていると想像するようになる物語だ。
私の部屋の壁は白く、装飾もほとんどなかったが、ベッドのヘッドボードに私は顔をしかめた。黄色だ。
この一時的な拘束に、私の友人や家族、ソーシャルメディアのフォロワーや編集者たちは興味をそそられたようだ。この部屋に入って最初の48時間で、私は12本以上のインタビューを受け、世界中から100通以上の応援のメッセージを受け取った。
私は愚痴を言ったり文句を言うためにここにいるわけではない。何と言ってもこの旅にはホテルの部屋や食事、新型コロナウィルスの検査費用や交通費など何万ドルもの費用がかかっている。
メンフィス・グリズリーズ所属のジャ・モラントが言うように、「私は上流階級の男じゃない」のだ。私のホテルの部屋には2つのベッドがあり、デスクとフラットスクリーンのテレビが設えてある。WiFiの接続も良く、機能的なトイレと熱いお湯が供給されている。
多くのNBAの選手たちが宿泊設備を問題にしているが、私はこれまで、もっと劣悪なコンディションで何度も仕事をしたことがある。
「バスケは私の人生!」ついに現場に戻れる日が…
たとえこれが94日間で終わっても、私は現場に戻ることを心底喜んでいる。3月にNBAが中断された時、私はまずその事実に目を背け、そしてひどく落ち込んだ。公衆衛生の危機を憂慮しながら、13年間私の日々を支配していたNBAのスケジュールを失って、途方に暮れた。
けれど、毎週、バスケットボールについてのみ記事を書き、ポッドキャストで5つのバスケット番組のホストをしている私だ。他にできることはほとんどない。
ワシントン・ポスト紙の仕事に応募した時のこと、すばやい転身が当たり前の同社において、上層部からこんな疑問が投げかけられた。「選挙運動について取材してみたいと思ったことはないか?」と。私のしらけた反応と頑固なこだわりは眉をひそめさせた。申し訳ない、だけどバスケットボールは私の人生なのだ。
4ヵ月間の中断期間中に、私は心の中では18ヵ月間バスケットボールなしとなる事態に備えつつも、どこであろうともプレーが行われた際には取材ができる準備も整えていた。その決意がNBAがこのバブル計画を公表した時に試されることとなったのだ。
A media hotel room inside the @NBA bubble at @WaltDisneyWorld pic.twitter.com/8wzd3KfdY9
— Ben Golliver (@BenGolliver) July 12, 2020
NBAからは、私がバブルに住むことを許された、フリーの報道記者の10人のうちのひとりであることが記載された通告が送られてきた。そしてロサンゼルスの自宅から現地へ飛ぶフライトまで残り24時間を切ったところで、最終的な健康状態確認書を受け取ることができた。
医療の承認が下りるのをハラハラ待ちながら荷造りをしなければならず、神経をすり減らした1週間だった。その間私は、片道チケット(このバブル計画が失敗した場合に備えて)を取り、ファーストクラスにアップグレードしたり、迎えの車を予約することで気持ちを落ち着け、なんとか乗り切った。
私の心は穏やかではなかった。パンデミックの最中、いろいろなことがあったのだ。
まずは7日間の隔離と検査を毎日
日曜日の午後、気分よくバブルへと到着し、NBA仕様のディズニーリストバンドを受け取った。このリストバンドをつけていれば、何も触らないで自室に入ることができるのだ。ニューヨーク・タイムズ、AP通信、USAトゥデイ、その他の報道各社の記者たちがマスク姿で、お互いに安全な距離を取りながら集まって、それぞれの1週間の自己隔離生活に入るのを待っていた。
NBAは厳しいルールを課しており、体温を測ること、パルオキシメーターを使うこと、そして毎朝iPhoneアプリを通して行われる医師との非対面での症状の聞き取り調査に答えることが要求されている。自分の医療上のプライバシーを守ることとバスケットボールについての記事を書くことの間で、私は後者を選んだのだった。
私はここにいて安全だと感じる。たとえそれが、厳重な規則と広大な敷地が生み出す錯覚だとしても。
フロリダ州は新型コロナウイルスのホットスポットだ。適切なタイミングで信頼できる検査を受けられ、注意深く健康状態を監視してもらえることは、多くのアメリカ人が享受することができない特典だということはよくわかっている。検査で陰性の結果を受ける度に、私は安堵と共に悲しさも感じるのだ。
ロサンゼルス・クリッパーズのガード、パトリック・ビバリーは今週、皮肉な口調でこう述べた。「バブルは自分で作るものだよ」。彼は賢い。
コートに会話が戻ってきますように
ディズニー・ワールドで3ヵ月過ごすということを初めて聞いた時は歯ぎしりするような思いだった。フロリダの湿度はひどく不快だし、遊園地は散歩には不向きな場所だ。ましてや、漫画を読むこともなく、どれがベルでバンビでバズなのか見分けられない、現実派の私にとっては……。
それでも、私は何のプレッシャーも感じなかったし、自分を納得させる必要もなかった。報道担当者の席はコートから10フィート(約3メートル)の距離にある。夢の復活だ。世界の一流(の、そして健康な)選手たちが、シーズン後のプレーアウトを招待者限定で数十人の観衆の前で行うのだ。
もし家にいたとしたらこのFOMO(取り残されることへの恐怖心)は耐えがたいものだったはずだ。この大舞台に代わる劇場などない。
すべての人々が健康であるということ以外で、私が最も強く望むのはこのバブルがうまく機能すること、そしてコートに会話が戻ってくることだ。ここにいる300人の選手たちはゴールを決めることを目指して心を整え身体を鍛えてきた。自分たちの中から勝ち上がる優勝者が讃えられる場面を見る権利がある。
届けられる食事は毎食、ウィルス拡散を防止するためにほとんどがパッケージ詰めの食品だった。結果として手をつけないままのジャンクフードが山と残る。食生活の不足分を補うために、私は火曜日までに64オンス(約1.8kg)ものピーナッツバターをネット注文した。
スマートウォッチが要求する1日12000歩の歩数を確保するために、部屋の端から端を1回につき8歩ずつ行ったり来たりしているうちに、太平洋のそよ風が恋しくなった。
レブロンやザイオンがコートに立つのを見られるのだから
けれどこんなのはほんの些細な犠牲だ。レブロン・ジェームズやザイオン・ウィリアムソンがコートに立つ姿を見れば、そんなものはすっかり忘れるだろう。
NBAの再開へ世間の関心が大きな波となって押し寄せているのを見ると心が躍るが、バスケットボールは中断したままにすべきだと反対する意見にも共感を覚えている。
私はそんなことを毎日考えている。
検査で綿棒を入れられた後、鼻がむずむずとするのを感じながらこのホテルの部屋に閉じ込められている私には、10月の状況など取るに足らない、遠い先の話のようにも思われる。
今年は、ジャーナリストとしての公平性だけではなく、人間性が問われる年だ。私は40歳になっていないが、どのチームが優勝してもいいと思えるくらいには成長している。
この隔離区域で唯一勝敗を気にしなければいけなのは、私の愛するスポーツと我々につきまとっている病原菌との戦いなのだ。
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July 31, 2020 at 10:29AM
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八村塁選手が過ごす「バブル」ってなに? ディズニーリゾート内隔離区域の厳重ルール | 米紙“バスケは私の人生”NBA番記者がレポート - courrier.jp
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