生きているといろんな体験をしますね。中にはかなりしんどい体験もありますね。 頭痛、吐き気、対処法がよくわからない謎の痛み。それらが束になって襲いかかってくると、まるで終わりのないジェットコースターみたいにスリリングな人生を味わうことになりますね…。 ある程度ルーティーン化した苦しみはしょうがないとして(二日酔いなど?)、得体の知れない苦しみは恐怖さえも呼び起こします。たとえば、体は動いていないのにただ下へ、下へと落ち続けるあの奇妙な感覚。 あれはどこから来ているのでしょうか。あれがきたら、どのように対処すればいいのでしょうか? 今回の「Giz Asks」では、医療専門家にこの謎について伺ってみました。
めまいにもいろいろある
Helen S. Cohen(ベイラー医科大学耳鼻咽喉学教授) 自分の体が動いていないのに、あたかも動いているかのように感じる錯視的な感覚をめまい(vertigo)と言います。落ちているような感覚かもしれませんし、ぐるぐる回ったり、ゆるやかに揺さぶられている感覚に近いときもあります。 これと関連して、自分は動いていないのにまわりの世界が動いているように感じることを動揺視(oscillopsia)と言います。そして、めまいや動揺視を体験する人は、前庭器官(vestibular system)になんらかの異常がみられるケースがほとんどです。 前庭は平衡感覚をつかさどる器官です。内耳の奥深くに骨迷路と呼ばれる空洞があり、そこに位置するふたつの受容器が加速度センサーのような役割を果たしています。これらのセンサーは、あなたがどの方向へどのぐらいのスピードでどのくらいの距離を移動したかという情報を脳に送っています。前庭器官のこの働きがなんらかの病理によって影響されると、めまいや動揺視を引き起こす場合があります。 また、前庭器官になにも異常がみられない場合でも稀にめまいを感じることもあります。たとえば子どものころ、すばやくクルクルと回転を繰り返してから、動きを止めたあともまだ回っているかのような感覚を楽しんだことはありませんでしたか? めまいです。波が高い日にボートで漕ぎ出して、帰ってきてからもまだ波に揺さぶられているように感じたことは? あれもめまいです。どちらの場合においても、前庭器官から送られてきた情報を受け取った脳が過剰に刺激され、その情報を一時的に保存してしまうために、平衡感覚の情報を更新するのが滞ってしばらくめまいのような感覚が続くのです。 もっと身近な例もありますよ。映画館の暗闇の中、前方の巨大スクリーンに映し出される大迫力のカーチェイスシーンを鑑賞しながら、ふと自分も動いているかのように感じたことはないですか?これは映像によってもたらされるめまいです。前庭器官から脳へ送られる情報が視覚によって補われているために起こります。逆に、視覚情報に刺激されて脳が前庭器官のスイッチを入れることにより、じっとしているのにも関わらず動いているような感覚を味わうこともあります。
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