2050年に温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指す「カーボンニュートラル」を理解する手法として、カードゲームが一役買っている。二酸化炭素(CO2)などのガスは目に見えない上、排出量削減の取り組みは政府や業界、市民と、立場によって異なる。ゲーム形式で分野ごとの具体的な事例を知り、全体を俯瞰することなどで「腹に落ちる」と好評だ。民間会社のほか、青年会議所やNPOも制作しており、企業や自治体、教育現場での活用が広がりを見せている。(堀内達成)
9月上旬、大阪市内のビルの1室で、完成したばかりのゲームの体験会が開かれた。参加した約40人はまず、政府や自動車メーカー、金融機関、環境NPO、電力会社など12組織に分かれた。各グループには8枚のカードが配られ、どの4枚を使うかを選択する。政府であれば「炭素税の導入」、部品メーカーなら「商品の大量生産」といったところだ。
組織ごとに決められたゴールがあり、環境NPOは「(温室効果ガスが)排出量よりも吸収量が多くなる」、商社なら「所持資金を1万5000M(マネーの意味)以上にする」。カードを使う際にはお金が必要で、組織同士で資金を融通し合ったり、情報を交換したりしながら、日本社会全体の排出量削減を目指した。
このゲームは、司会が脱炭素を巡る世界の状況を説明しながら進められる。体験会には脱炭素を職場に浸透させる役割を担う会社員や自治体職員らが参加しており、高砂市の職員は「経済と環境を両立させる必要性や、一つの組織だけで脱炭素を実現することが難しいことがよく分かった」と話していた。
今回使われたゲーム「2050カーボンニュートラル」を手がけたのは、人材育成のための研修コンテンツ作成などを行うプロジェクトデザイン(富山県滑川市)。企業や自治体では、脱炭素に向けた取り組みの進め方や職場の意識を高めていく方法などで悩んでいるといい、担当の竹田法信さんは「ゲームを通して成功や失敗を体験し、実践に生かしてほしい」と話す。
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子どもたちに脱炭素を分かりやすく伝えるカードゲームも開発されている。
広島青年会議所(広島市)では、勇者とドラゴンの戦いを通じて温室効果ガス削減の方法を考えるゲームをメンバーが独自に制作し、「カーボンクエスト」と名付けた。市内の小学校で出前授業をしたり、学校の授業で活用できるよう配布したりしている。
北陸電力敦賀営業所(福井県敦賀市)も社員が小学生高学年向けに開発。社会課題の解決に取り組むNPO法人イシュープラスデザイン(東京)は作ったカードを使い、学生や市民向けの講座を展開している。
マーケティングリサーチなどのインテージ(東京)の調査によると、22年1月時点のSDGs(持続可能な開発目標)の認知率は8割で、2年前の3割から大きく伸びた。プロジェクトデザインのゲーム制作に協力した環境省近畿地方環境事務所の福嶋慶三さんは「先に開発されてきたSDGsを学ぶカードゲームが、認知率の向上に貢献した面もあるはず。カーボンニュートラルのゲームも追随してほしい」と期待する。
からの記事と詳細 ( 脱炭素ってなに?カードゲームが理解に一役 政府や企業、市民になりきり排出量削減目指す NPOなど制作 - 神戸新聞NEXT )
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