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Sunday, May 24, 2020

木村花選手の死去によって、悪意が悪意を呼ぶ展開には絶対にしてはならない(ふじいりょう) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース

 プロレスラーの木村花選手が22歳で亡くなった。まずは心からの哀悼を捧げたい。

 

 今回のことで、ネット上での誹謗中傷について「許さない」という声から、実際にTwitterで花選手に心ないリプライや言及をしていたアカウントに対して、発信者を特定することを求める意見も多数上がっている。

 筆者もさまざまなネット媒体で記事を配信している事から、時には「炎上」状態になってTwitterで「リプライスクラム」とも言える攻撃に晒されたことは何度もある。その時の経験から言えば、通知がひっきりなしに来ることによって、精神から余裕がどんどん失われていき、「自分には誰も味方がいない」という感覚に陥る。特にTwitterでは瞬発的に不特定多数からの言葉の牙が飛んでくるので、例えいちいち読まないでも通知があったことが知らされるだけで、頭の中で処理しきれなくなる。

 正直なところ、その瞬間に味方をしていない人は、当事者からすれば「なぜその時に助け舟を出してくれなかったのか」という気持ちになる。また、「SNSを見なければいい」「批判に耳を貸さなければいい」というのは「アドバイス」であって「味方になってくれる」ということではない。そして、今や芸能人でなく、一般人であってもそういった「私刑」に遭うというのは、以前に筆者が山梨県の新型コロナウイルスで陽性と診断された患者が叩かれた構図を見れば分かることだ。

 山梨・高速バス移動女性の新型コロナ陽性発表・報道に見る「私刑」の構図

 花選手の死去を受けて、メディアが一報を出し、多くの女子レスラーがツイートをしている。ハフポストの記事では、花選手がリアリティ番組『テラスハウス』に出演していること、所属団体のスターダムの発表文、ネットで誹謗中傷があったことを報じている。

 テラハ出演中の木村花さんが死去、所属先が発表 ネットで誹謗中傷を受けていた(ハフポスト)

 花選手に対して攻撃が増したのは、『テラスハウス』第38回の「コスチューム事件」が発端だったとされている。この時のエキセントリックな言動に対して「何様のつもり」といった声が多数上がったのだが、プロレスファンからすると視点が変わってくる。

 花選手の母親である木村響子さんは、2017年に引退した元プロレスラーだ。響子さんが女子レスラーとして活動していた2000年代は女子プロレスの暗黒期だった。そんな中で響子さんはインディー団体や自主興行にも積極的に出場して、ハードコアマッチも厭わなかった。筆者は当時、響子選手の出場する興行でまだ小さかった花さんの姿を何度か見かけている。母親が文字通り身を削って戦っているところを見せられていたことについて、後に雑誌で「プロレスが大嫌いだった」と語っていたこともある。

 その後、2010年代になってスター選手が徐々に生まれたことにより、女子プロレスの人気は徐々に回復していった。アメリカWWEが女子選手をプッシュするようになったことで、スターダムからもカイリ・セイン選手や紫雷イオ選手が海を渡っている。そこに、新日本プロレスの親会社ブシロードがスターダムを2019年に買収。花選手は新日本プロレスの東京ドーム大会に前座のタッグマッチながら出場している。その時に着用していたのが、洗濯されて縮んでしまった件のコスチュームだった。女子プロレスの試合を東京ドームで行われるということは、一昔前なら考えられなかった。このことはレスラー関係者やファンにとっては非常に大きな意味を持つことだった。

 

 「女子プロレスをもっと広めたい」という思いを持って『テラスハウス』に出演していた花選手にとって、視聴者からの反応に傷ついたのは想像に難くない。ただ、スターダムの発表では「詳細につきましては、いまだ把握出来ていない部分もあり、引き続き関係者間の調査に協力してまいります」とある。誹謗中傷があったということは、各メディアが「原因の一つの可能性」として触れているが、花選手を追い詰めたのは果たして『テラスハウス』の視聴者からのネットでのバッシング「だけ」だったのだろうか。

 

 例えば「消えろ」「やめろ」といった侮辱的なリプライは、名誉毀損あるいは脅迫になる可能性があるだろう。では、「早く『テラスハウス』を卒業してほしい」というツイートはどうだろう? 読み方によっては「番組の感想」と捉えられるのではないか。

 しかし、花選手にとっては『テラスハウス』に出演し続けないといけない理由があったのではないか。前述したように、女子プロレスを広めることが出演した目的だったからだ。ある意味で女子プロレス界を代表してテレビ番組に出ているという意識だったのかもしれない。そういった使命感と、バッシングされる辛さとの板挟みで苦しんでいたのではないだろうか。

 ここまで記したことは、筆者の憶測に過ぎない。だが、報道でフレームアップされた「誹謗中傷」があったということ「のみ」を、彼女が亡くなった原因とするのも、現段階では憶測のように感じられる。

 

 既に、各スポーツ紙では「誹謗中傷していたアカウント」が次々に削除されていることを報じている(参照)。ネット上では既にアカウントを特定しようという動きも散見される。筆者には各メディアが業界関係者のツイートを報じることによって「私刑」を煽っているように見える。

 今回の件で、こういったネット上の誹謗中傷(名誉毀損や侮辱)について、相手を特定して法的に制裁することへの議論が高まっている。この動きは女優の春名風花さんが名誉毀損で提訴に踏み切ったこと(参照)から続く流れだが、当事者だけでなく第三者がネット上で「私刑」を煽り、憎悪が憎悪を呼ぶ連鎖を断ち切る根本的な処方箋になるかといえば、疑問に感じざるを得ない。また、「批判」と「侮辱」の線引きが曖昧なままで議論をしても不毛に思える。前述したように、「番組の感想」で出演者が傷ついたことまで罪に問えるのか。問えないから「私刑」にして「社会的制裁」を加えるということを正当化していいものではない。今回多くの著名人が「誹謗中傷」について怒りのツイートをしているが、そのことが「私刑」してもいいという空気を作ることを、強く危惧する。

 この問題にSNS側が手をこまねいているわけではなく、最近Twitterはツイートにリプライできる相手を3段階に設定できるグルーバルなテストを開始している(参照)。多くのSNSは名誉毀損などの投稿をすることを規約で禁止しているが、投稿そのものを止めることはできないでいた。このTwitterのテストは、少なくとも当事者の直接送られる暴言をシャットアウトすることは期待できる。

 となると、メディア側としては、悪意の連鎖を助長するような発信をすることに対して、慎重な姿勢が求められるだろう。例えば岡村隆史さんのラジオ『オールナイトニッポン』での「女性蔑視とも取れる発言」は軽率かつ不適切だったと筆者も考える。だが、それで無法図にバッシングしていいのか、というと別の問題だ。今や誰もがネットで発信できる中で、「叩いていい」というお墨付きを与えるような記事を乱発することに、危うさを感じる。

 ところで、刑法230条に規定される名誉毀損罪は「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」とされている。花選手が亡くなったことがネット上での誹謗中傷として、この件で怒りを示している人たちはその「制裁」で納得できるのだろうか。筆者の心情としては正直なところ納得がいかない。たった一つのツイートでも、相手を傷つけて、場合によっては死に繋がるということを、誰もが意識すること。まずはこの認識からはじめないといけないのではないだろうか。

 今更どれだけ言葉を尽くしても、花選手はもう戻ってこない。今はこの悲しみを共有して、別の誰かを追い詰めるようなことがないことを願うばかりだ。

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May 24, 2020 at 12:04PM
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