「なに」、「いつ」、「どこで」といった疑問詞ではじまる質問を聞いた時に、ヒトの左脳の前頭葉にある言語野が抑制されることを、米ウェイン州立大学ならびに東北大学、精神・神経医療研究センター病院らで構成される研究チームが明らかにした。従来の定説では、「ヒトが言語処理をする際、左脳の前頭葉にある言語野が活性化する」とされていた。
同研究の成果は、米ウェイン州立大学の岩城弘隆 研究員、同・園田真樹 研究員、同・浅野英司 終身教授、同・Brian H. Silverstein 研究員、同・三橋匠 研究員、東北大学脳神経外科の大沢伸一郎 助教授、同・冨永悌二 教授、同・医学系研究科てんかん学分野の浮城一司 研究員、同・中里信和 教授、同・高次機能障害学分野 医員・博士課程院生の柿沼一雄氏、同・鈴木匡子 教授、精神・神経医療研究センター病院脳神経外科の岩崎真樹 部長、同・高山裕太郎 研究員、広島大学大学院人間社会科学研究科の神原利宗 助教授らによるもの。詳細は3月4日付で英国の学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
機能的MRIを用いた過去の研究では、「質問を聞き取るために左側頭葉が活性化し、その回答を導出するために左前頭葉の前頭前野が側頭葉とともに活性化する」という定説どおりの所見が数多く報告されてきた。
今回の研究は、「空を飛ぶのは何?」、「何が空を飛ぶの?」のように同じ単語が異なる順番で並んでも、意味が変わらない文章である「かきまぜ文」に対する脳内の言語処理の違いを明らかにする事を目的とした。研究グループは、難治てんかんの外科手術を受ける日本語を母語とする患者に対し、術前検査の一環として、患者の脳表面に留置した電極からかきまぜ文を組み込んだ質問に回答する際の皮質脳波を記録し、解析を行った。
研究グループは皮質脳波から、10ms(ミリ秒)単位で脳機能を解析した。これは、従来用いられてきた機能的MRIの100倍高い時間分解能である。本解析により、質問に回答する際に大脳で生じる神経活動の詳細な時空間動態を評価することが可能となった。その結果、「なに」からはじまる質問において、その質問に耳を傾け、理解しようとする際、左側頭葉が活性化する一方、左前頭葉は抑制されていることが明らかとなった。左前頭葉は、抑制された後に活性化に転じるが、活性化のピークを示したのはその質問文の中盤になってからであることが示されたという。
一方、具体的な言葉からはじまる質問(例:「空を飛ぶのは何?」)に対する言語処理では、最初のフレーズを聴くと、即座に回答を導出するために左前頭葉の活性化が認められた。つまり、定説どおりの言語処理がみられたということである。
どちらの場合も回答時間や質問への回答の正答率に差はなかったという。
研究グループでは、今回の研究成果について、日本語を用いる人々の脳内言語処理の謎に迫るものになるかもしれないとしており、今後、違いを明らかにするべく英語などの他の言語の話者においても、「なに」で始まる質問文に関しては同じ言語処理を行うのか調べる予定だとしている。
からの記事と詳細 ( 「なに」から始まる質問は、聞き手の左前頭葉の言語野を抑制することが判明 - マイナビニュース )
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