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Tuesday, May 25, 2021

ビジネスになにができるか? 3人のあたらしい「実業家」が考えていること。あなたは世界になにをもたらしますか? - GQ JAPAN

apaituberita.blogspot.com

座談会に参加した3人の「実業家」

(写真左から)
葉一(はいち)
無料で授業が受けられる「とある男が授業をしてみた」というチャンネルをYouTubeで開設し、登録者数は100万人以上。教育系YouTuberの第一人者。

常田俊太郎(つねた・しゅんたろう)
アーティストとクリエイターをつなぐプラットフォームを提供するユートニックの設立者。常田大希率いるミレニアムパレードのメンバーでヴァイオリンを担当。

銅冶勇人(どうや・ゆうと)
アフリカの雇用、教育、健康といった社会課題をファッションを通して解決するファッションブランド「CLOUDY」を設立。ゴールドマン・サックス出身。


コロナが〝当たり前〟を変えた

──コロナ禍で社会が大きく変わりつつあります。いま日本に、世界に、時代に、必要なもの、足りないものはなんだと思いますか?

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© Maciej Kucia

常田: 僕は〝しなやかさ〟だと思っています。さまざまな前提が崩れているなかで、これまで当たり前だったあらゆることに改めて〝Why〟 が投げかけられている。既存の体系がバランスを失ってきている過渡期がいまなんだと思っています。クリエイティブな業界においても、作品の作り方、リリースの方法や広め方、リアルイベントの考え方、オンラインの使い方、など活動のひとつひとつで一度ゼロに立ち返り、形を変えていくことができる、そんな〝しなやかさ〟 が求められる時代だと思っています。

葉一: 僕も言葉は違いますが、同じようなことを考えていました。いま必要なのは、「当たり前を疑うこと」。昨年の休校措置を機に、学校の先生も、慣れないオンライン授業を行ったり、授業動画を自分たちで制作したりしていました。現場の先生たちだけではなく、児童・生徒や保護者たちもいままで当たり前だった教育だけではなく、新しい選択肢があることを知ったわけです。ところが、学校が再開すると、多くの学校で従来型の授業スタイルに戻った。それが悪いわけではないですが、変わらなきゃいけない部分は必ずあるはずなのに、すべてがもと通り。当たり前だった生活がコロナによって当たり前じゃなくなったからこそ、いまある当たり前を疑い、変化させることに思考を巡らせることが必要なのではないでしょうか。

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© Maciej Kucia

銅冶: まさにそこですよね。「本質」とはなにかを考えていくことが必要。これだけ情報化社会が進み、情報が溢れ るなかで、個人個人が本質を捉えて、自分の言葉や行動で動くことができているのか。責任を負わない言葉や行動になっているのではないか、とおそれています。

過去に固執しない

常田: 物事の本質に目を向けず、過去の経験や当初の計画に固執する人たちが多いですよね。僕らの世代の人間にと って、ここまで人間の無力さが広範囲で浮き彫りになったのは初めての経験でした。感染者数がどうだとか、ワクチンがどうだとか、自分だけではコントロールしきれないことに一喜一憂していると、なかなか向き合うべきことにも向き合えない。過去や計画、想定に執着せず、時には流れに身を委ね、自らの無力さを認識した上で、前向きに努力をしていく。それが幸福な創作活動を行う上で大事なスタンスだと思っています。

葉一: なにがなんでも「コロナ前の状態に戻すこと」に固執する人が少なくない。なにかを失ったらそれを取り戻したくなるのは自然な感情だと思いますが、それを取り戻すためには莫大な時間と労力がかかるのも事実です。それならば、「コロナ前の状態に戻す」のではなく「新しい状態を作っていく」ほうにシフトしてい ったほうがポジティブなのではないかと思っています。

銅冶: 常識やルールは、目の前の現実によってどんどん変わっていっていいと思います。私はガーナで商品を生産する自社工場を運営しています。もちろん、児童労働は行っていません。ですが、現場に足を運ぶと、子どもの労働力に頼 っている家族が多くいるのも現実。そうや って日々をなんとか生きつないでいるのです。現状では、子どもが学ぶにはお金もかかるという事情もそこにはあります。そういった部分を無視して白か黒かで議論をするのは「本質的」ではないと思うんです。現場の環境も知らずして、多数派の価値観を一方的に押し付けることは逆に本質的な解決を遠のかせる場合もある、とも思えるのです。

葉一: 本質を考えるということは、僕もいますごく大事にしていることです。多くの情報が簡単に入手できる時代だし、子どもたちにもどんどん入ってくる。フェイク情報もいっぱいある時代なので、取捨選択する力が必要です。

常田: 本質を見抜き、取捨選択をする上で必要なのがイマジネーションでしょうね。目の前に並んでいる文字情報だけでなく、人の心のなかや現場の状況を想像する力が大切ですよね。

どんな人間になりたいですか?

──いろいろと価値基準が揺れ動いているいま、みなさんは、これからの時代に、どういう人間でありたいと考えていますか?

銅冶: いまアフリカで活動をしているのですが、どうしても相手に対しての配慮というものが足りないと思うときがあります。個人的には、もっと相手の立場になって物事を考えられるようになりたい。相手の立場になって一緒に問題解決に当たっていくことが大事だな、と思っています。たとえば、僕たち男性が、もし女性のように月に1回、生理があると考えたらどうなのか、というようなことですね。むちゃくちゃお腹が痛くなったり、むちゃくち ゃダルくなったりという状況が毎月来るとしたら……。

葉一: かなりつらいですね……。

銅冶: ですよね。そう考えると、女性は本当に大変だろうなって思うことができる。自分がサラリーマン時代、1年目、2年目の時の自分の苦しかったこととか、嫌だったこととかを忘れて、同じようなことを部下にさせてしまっている自分、かつての自分と同様の立場にある人の気持ちを、汲みとりきれていない自分がいる。だから僕は、相手の立場になって考えること、そしてその人に、いまの生活をどうエンジョイして、どうポジティブに成長していってもらえるか、ということを意識するようにしています。

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© Maciej Kucia

葉一: 僕の場合は、自分がどうなりたいかというよりも、子どもたちにどうなってほしいかと考えてしまうんですが……。僕は、いつも子どもたちには、選択肢を多く持ってほしいなと思っています。こうじゃなきゃダメということはなにもない。男の子だからこうとか、女の子だからこうとか、こういう生き方をしなきゃダメとか、そういうものはなにもない。昔だったら子どもたちに勉強を教えたいとなったら学校の先生か塾の先生になるかしかなかった。でもいまは自分がやっているようなやり方もあるし、ほかのやり方だって絶対ある。いろいろな選択肢を持っている人は、ほかの人が持っている選択肢を認めることができるのではないかと思うんです。

銅冶: たしかに自分の考え方に固執する人は、他人を受け入れることができないですよね。

葉一: そうなんですよ。だから、まずは自分がいろいろな選択肢、考え方を持つことが大切。みんながそうなることで世の中が変わっていく気がします。

常田: 僕は、自分の幸せを自分で決められる、自分で定義できる人でありたいなと思っているんです。自分の〝物差し〟を持って、自分の幸せを他人との比較ではかるのではなく、自分の尺度での幸せを感じながら生きる。みんなが自分の幸せの基準となる〝物差し〟を持つことがすごく大切な気がします。

葉一: とりわけ、これから大きくなって、次の社会を作っていく子どもたちには、そうあってほしいですね。自分らがいろんなことの価値観、新しい物差しを見せてあげて、いまの子どもたちが、 みずからの〝物差し〟 を独自に持つようになっていく助けになれるといい。そして、彼らがいまの自分ら世代になったときに、世の中がちょっと変わっていたらいいですよね。


トークショーの模様は、以下のビデオよりご覧いただけます。


PROFILE
葉一
教育系YouTuber
1985年生まれ、福岡県出身。教材販売の営業や塾講師を経て、2012年にYouTubeに「とある男が授業をしてみた」開設。現在登録者数142万人。近著に『塾へ行かなくても成績が超アップ! 自宅学習の強化書』。

常田俊太郎
株式会社ユートニック代表取締役、
ヴァイオリニスト
1990年生まれ、長野県出身。4歳からヴァイオリンを始める。東京大学工学部卒業後、コンサル会社を経て、音楽家やクリエイターの活動を支援する株式会社ユートニックを設立。ヴァイオリニストとしても活動。

銅冶勇人
株式会社DOYA
代表取締役社長、NPO Doooooooo代表理事
1985年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学卒業。 2010年、ビジネスを通してアフリカに教育と雇用を作り出すNPO Doooooooo創立。2015年株式会社DOYA、アパレルブランド「CLOUDY」を立ち上げ。

Photos マチェイ・クーチャ@AVGVST
Styling 倉田強 Tsuyoshi Kurata
Hair & make-up 吉村健 Ken Yoshimura
Words 川上康介 Kosuke Kawakami
(協力 ヴァレンティノ・ジャパン)

 

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