厚生労働省による「令和元年国民健康・栄養調査報告」によると、食習慣改善の意思を問うと「関心はあるが改善するつもりがない」という回答が男女とも25%ほどをしめるという。
BMIが標準より高すぎる人は「食習慣に関心はあるが改善するつもりはない」と回答した人の割合がもっともたかく、BMIが標準より低い人は「食習慣に問題はないため改善する必要はない」と回答した人の割合が最も高いのだという。食塩摂取量の過剰や少ない人も同様に「改善するつもりはない」と回答しているという。

食習慣は「習慣」となっていて、なかなか改善が難しいということの表れだろう。
だからこそ子どもの頃からの「食育」は重要なのだといえるが、「食育」をするにはお金も必要だ。貧困問題と食育問題はセットで考える必要がある。

40歳の契約社員・沙織さん(仮名)はだるさが続き、胃の不快感、頭痛、耳鳴り、立ちくらみなどを常に感じていたが、食生活改善どころか病院での検査もしないままでいた。あまりに体調が悪いので病院に行くも画像ではなにも出てこず、機能性ディスペプシアと診断をされた。

しかし処方された薬を飲んでも症状が改善せず、飲むのをやめてしまう。そんな矢先に電車で倒れて病院へ。「新型栄養失調では」という疑いが出たのだ。そうなるまでの食生活はどのようなもので、どうしたら改善できるのか。

なお、医療面については内科医の小田切容子氏に監修をいただいた。

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疑われたのは「新型栄養失調」

通勤途中で倒れても、契約社員であることと、業務に関係がないために労災は適用されなかった。初診料、検査料、注射料、ベッド使用料などの医療費自己負担は1万1000円程度だったという。「倒れて運ばれても、この程度なんだ……日本っていい国だな」と思ったという。

沙織さんが疑われたのは、新型栄養失調だ。現代版栄養失調ともいわれている。話題になったのは、2000年に定められた厚生労働省の「食生活指針」が2016年に改訂されたときだ。このときに、「若い女性のやせ、高齢者の低栄養」が追加されたことで、低栄養が注目される。
それがやがて、「カロリーは足りているのに、栄養素が不足している」という新型栄養失調が注目を集めるようになる。

この頃から、子供や女性の貧困が社会問題になり、貧困層の食事が糖質過多でたんぱく質が不足していることが注目されるようになった。女性の栄養問題については、社団法人・女性労働協会(厚生労働省委託事業者)も、「偏った食生活や室内主体のライフスタイルによる新型栄養失調は年々増え続け、働く女性の栄養失調は深刻」と警鐘を鳴らしている。

簡単におなかを満たすものはどうしても糖質が過剰になる Photo by iStock