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Saturday, August 1, 2020

中田監督「やり切った時間の共有を」 女子バレー - 時事通信ニュース

2020年08月01日14時00分

2月の代表合宿で取材に答える中田久美監督=2020年2月14日、東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンター

2月の代表合宿で取材に答える中田久美監督=2020年2月14日、東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンター

  • 2月の代表合宿でスパイク練習をする石川真佑=2020年2月20日、東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンター
  • 2月の代表合宿でレシーブ練習をする黒後愛=2020年2月14日、東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンター

 ◇「足を止めるわけにいかない」

 コロナ禍で東京五輪が延期になり、国際試合再開のめども立たない中、合宿中の女子バレーボール日本代表・中田久美監督が7月31日、リモートで記者会見し、チームの現状などを語った。先の見えない状況と限られた環境にあって、取り組んでいる強化とは―。

 中田監督「コロナで今年は全ての国際大会が中止となってしまいましたが、延期された五輪(がどうなるか)を不安視するよりも、今できることを全てやって、選手たちに全力でやり切ったという経験と自信を持ってもらえるように、時間の共有、意思の疎通を大きな目標に合宿をしています。3月の米国遠征(中止)のために選抜していた17人の選手プラス2人の19人で、再開ガイドラインに基づいて、7月5日から段階的に招集し、強化を進めているところ。合宿前は選手のコンディションが非常に心配でしたが、思った以上にしっかり調整してきた選手が多いので、順調に来ています」

 ―東京五輪の延期が決まった時や、今回の合宿にあたって選手にはどんな話を?
 「選手たちとグループLINEをしていて、ネガティブなことより、うまくなれるチャンスが増えたということで、この期間しっかり、時間の無駄のないよう準備しようと話しました」

 ―この間に強化したい部分は。
 「昨年のワールドカップ(W杯)の反省などもあるし、課題もたくさんある。特に今回は、世界の強烈なサーブに対するサーブレシーブ隊形の習得と確立。バックアタックを含めたコンビのスピードと正確性。あとはイタリアとかセルビアのように、オポジットにポイントゲッターがいるチームに対しての基本のクロスのレシーブ。そのへんの強化が、時間が増えた中でじっくりできると思います」

 ―年内は国際大会がないので、実戦が不足する。
 「7月から段階を追って練習していて、まだ男性の練習パートナーとゲーム形式までは強度を上げられていない。この合宿後半でしっかり練習パートナーを相手に高さ、パワー、個人としてもチームとしても強化を図りたい」

 ―新鍋理沙さんの引退とその影響について。
 「非常に残念だけど、新鍋の性格を知っているだけに、意思も固く、尊重してあげるべきだと思う。でも私たちは足を止めるわけにはいかない。これはバレー界全体の大きな課題だと思うけど、アウトサイドに入る選手は全てのポジションができるように強化、育成をしないといけない。身長180センチ以上あるミドルの選手が、ブロックはできるけどレシーブはできないとか、そういうことのないように。オールラウンダーの育成が世界と戦う上で課題になる」
 
 ―新鍋さんにはどんな言葉を。
 「6月の中旬から下旬にかけて、引退を決めましたという報告を受けました。チームの強化方針、けが、五輪延期といろんなことが彼女の中で重なったんだろうなと。五輪でメダルを取るのがどれだけ大変か一番分かっている選手。妥協をしない選手なので、相当悩んだと感じている」

 ◇長岡の復調は50%

 ―膝の大けがで代表を離れていた長岡望悠(久光製薬)を追加登録した。
 「新鍋が引退したから招集したのではなく、調子が上がってきているので、3月下旬からの合宿で様子を見ると決めていたから、計画通り。まだ50%くらいだと思うけど、実戦的な練習を重ねることで、脳の神経をどう膝の方につないでいくか。筋力トレーニングだけじゃなく、神経系のトレーニングをやっていけば、戦力になると思う。様子を見ながら決めていきたい」

 ―石川真佑(東レ)がW杯以降に成長した部分は。
 「この合宿で選手一人一人と密にならないように面談をしている。石川はこの自粛期間中、最初にトレーニングを始め、合宿に向けてコンディションを整えてきた。かなり調子が上がってきている。きょう話したら、去年の世界ジュニア選手権、アジア選手権、W杯と続いて疲れていたようなので、この4カ月休養もできて良かったと」

 ―オポジット(セッターの対角)には、紅白戦で黒後愛(東レ)、林真琴(JT)、長岡が入っているが。
 「評価はなかなかしづらい。試す期間と捉えてもらえれば。自粛のブランクもあるので、あまり難しいことをたくさん要求せず、今できることをしっかり強化していく。もちろん林にもサーブレシーブやレシーブでどんどん要求しないといけないし。黒後はポイントゲッターとしてかなり調子を上げて合宿に参加している。チームの形を選手たちに明確にしてあげる方が大事かな」

 ―若手で成長を感じる選手は。
 「20代前後が6人参加していて、若い勢いを感じる。特に第1次合宿より良くなっているのは石川と山田(二千華=NEC)。特にコンディションの面で、山田はVリーグ中にねんざをして、第1次合宿では途中で所属チームにお返ししていましたから」

 ―東レで主将になった黒後は。
 「確実に大人になったなという感じはします。日常生活でもコートの中でも落ち着いてきた雰囲気が見られるようになった。新たな責任が彼女を大きくしているのかなと。彼女の集中力がMAXの時のスパイクが、コンスタントに出るように。東レではサーブレシーブも積極的に練習していたようで、かなり上達している」

◇「諦めたら終わり」

 ―コロナで厳しい状況にあって代表合宿を続ける理由は。
 「バレーボールはつなぐ競技なので、特に女子は同じ時間を共有するとか、一緒に生活するといった中で信頼関係、人間関係をつくりあげるものだと考えている。チームの安全を大事にしながら強化ができることは、非常にありがたいと感じています」

 ―合宿再開までにスタッフと取り組んだことは。
 「いっぱいあり過ぎて分からない。結構リモートもしたし。合宿を再開する上でガイドラインにどう当てはめるか。感染防止を視野に入れてしっかり強化してチームにお返しする意味でも、各チームの監督さんとも連携を取って現在に至っています」

 ―今年、主将に指名した荒木絵里香(トヨタ車体)は。
 「五輪延期が決まった時、最初に頭をよぎったのが荒木でした。すぐに連絡して彼女の気持ちを確認して、大きな覚悟を持ってまた挑戦すると決めて来ていると思う。それは日々の練習を見ても感じるし、子育てしながらコンディションを整えてきたのはさすが」

 ―懸案のセッターは。
 「セッターには厳しい要求をしている。バレーの展開とか、それぞれ持ち味を私自身も理解し、かつチームがスピーディーに能力を発揮できるような。チームをまとめられるセッターを最終的には選びたい。スパイカーは調子が良いので、最大限引き出せるトス回しを要求したいと思う」

 ―五輪延期でモチベーションをどう維持するか。
 「アスリートだけでなく、われわれスタッフも難しい部分はある。可能性がある限り強化を継続することは当然だと思う。メダル獲得の目標達成のために、諦めたら終わり。どこを目指しているのかというところを、日々選手たちに伝えるようにしています」

 ―五輪の延期をどうプラスにするか。
 「できることはまだたくさんある。時間をチャンスに変えて、しっかりと準備するだけです」

 ■今年の中田全日本
 1月末に日本代表29人を発表。五輪年に配慮してVリーグが早く終わり、代表は2月初めから合宿に入った。3月の米国遠征、4月のテストマッチ、5~7月のネーションズリーグなどを経て五輪に臨むスケジュール。同リーグは長丁場で移動も激しいため、主力を休ませながら若手にもチャンスを与え、五輪直前に代表12人を選ぶ予定だったが、3月以降の予定はコロナ禍でキャンセルに。今年はVリーグが10月に始まる予定だが、国際試合は来年の予定もまだ不透明だ。

(時事ドットコム編集部)(2020.8.1)

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