田中芳樹さんの小説『銀河英雄伝説』には、型破りなキャラクターが多く登場しますが、自由惑星同盟軍のウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ提督は、謹厳実直を絵に描いたような良識の将として知られています。 【画像:ランキング34位~1位を見る】 メルカッツ提督は、もともと帝国貴族に生まれながら、下士官や一般の兵士との軍務を通じて庶民の感覚にも理解を示す、公正かつ冷静な人物。物語序盤は銀河帝国軍の重鎮であり、貴族連合軍の指揮官としてラインハルトと戦ったのち自由惑星同盟へ亡命し、以後はヤン艦隊のもとで客員提督として活躍しました。 今回は、そんな歴戦の老将であるメルカッツ提督の数あるセリフの中から3つを紹介します。
●特権は人の精神を腐敗させる最悪の毒だ。彼ら大貴族は、何十世代にもわたって、それに浸りきっている。自分を正当化し、他人を責めることは、彼らの本能になっているのだ
貴族連合軍の司令官を引き受けるにあたって、指揮系統が司令官のもとに統一されること、そして地位身分の別なく軍令に服することを条件として認めさせたメルカッツ提督。にもかかわらず艦橋で嘆息する彼に、副官のシュナイダー少佐がその理由を尋ねた際に返したのがこのセリフです。 貴族たちがどうせすぐに難癖をつけだすだろうと予見してみせたメルカッツ。もともと彼自身も貴族であり、自分も「軍隊で下級兵士に接するまで、そのことに気付かなかった」と、シュナイダーに対して素直に打ち明けています。
●後世の評価はおくとしても、実際、ヤン提督でなくては民主共和派の将兵を糾合できぬ。それゆえ同盟政府も味方ながら彼を恐れるのだろうな……
バーラトの和約ののち、潜伏艦隊「動くシャーウッドの森」を率いることとなったメルカッツ提督は、破棄される予定だった艦隊の艦船を強奪します。そのとき加わった義勇兵のひとりであるアシュール少佐は、メルカッツの意図を質し、その返答を受け入れたものの、ヤン・ウェンリーによる指揮を暗に希望していました。 そんなアシュールを「理屈の多い男」とぼやくシュナイダーに対し、メルカッツが「彼の言う通りだ」として語ったのがこのセリフ。同盟側の旗頭として自分が相応しくないことを十分に自覚しつつも、ヤンの難しい立場についても見事に言い当てた冷静な分析といえるでしょう。
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