相続対策として生前贈与をしていても、調査によってひっくり返されてしまうことがあります。税務署の方の着眼点を抑え、正しく贈与をし、指摘されないようにしていきましょう。ここでは、辻・本郷税理士法人の山口拓也氏が、相続の「税務調査の概要」について解説していきます。
【後編】「税務調査が自宅にやってきた…」1日の流れや“ペナルティ”を税理士が詳しく解説
「相続税として申告してください」といわれる財産
●調査の対象
亡くなった方の通帳などだけをチェックしておけばよいと思いがちですが、相続税の税務調査は亡くなった方だけではなく家族や親戚も一緒にチェックされます。配偶者やお子さん、お孫さんの通帳なども、事前に税理士に確認してもらった方が安心です。
●調査官のチェックポイント
対象が亡くなった方であるか、相続人である家族の方であるかによって、調査官が見ているポイントは若干異なります。
まず、亡くなった方については過去の所得税のデータをチェックし、所得税から財産を推測します。また不動産売買の履歴なども税務署の方は知っていますので、そのお金がどこにいっているのか、といったところもチェックされます。
不動産を売却したお金を通帳に入れずに、手元に持っておく方がいらっしゃいますが、それも知られているので、きちんと申告しておいたほうが安心です。
そして家族については、働いているのか、所得がどれくらいあるのかをチェックします。専業主婦の方については所得がありませんので、財産がある場合には「どうやってつくったのですか?」と問われます。
実家の相続、もしくはパートで働いた分、年金でもらった分…そういった情報を踏まえて、適正であれば問題はありません。しかし、これは夫が亡くなった妻の場合ですが、あまり所得がないにもかかわらず多額にお金を持っていると、亡くなった夫から流れてきたのではないか?と見られ、相続財産として申告してくださいといわれる可能性があります。
●調査官は何年前からチェックするのか?
銀行には通帳のデータが10年間残っているので、基本的には10年間通帳の流れをチェックされます。
ただ、専業主婦である妻が30年前から持っている通帳に1億円ある、といった場合があります。そして1億円は「昔からへそくりで貯めていた」となると、10年以前も考慮されることになります。
夫から渡された生活資金があまって貯まったものなのであれば、原資が夫ですから、「これは相続財産です」といわれてしまう可能性があります。
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