「静かで控えめ」は賢者の戦略──。そう説くのは、台湾出身、超内向型でありながら超外向型社会アメリカで成功を収めたジル・チャンだ。同氏による世界的ベストセラー『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』(ジル・チャン著、神崎朗子訳)は、聞く力、気配り、謙虚、冷静、観察眼など、内向的な人が持つ特有の能力の秘密を解き明かしている。騒がしい世の中で静かな人がその潜在能力を最大限に発揮する方法とは? 著者にZoomインタビューを刊行、同書について存分に語ってもらった。(取材・構成:田中裕子、写真:Wang Kai-Yun)
「必要なコミュニケーション」から逃げない
――チャンさんは台湾の大学を卒業した後にアメリカの大学院に進学し、そこでスポーツ業界のインターンに参加されました。こうした経験の中で、台湾とアメリカのカルチャーの違いをどのように捉えていましたか?
ジル・チャン(以下、チャン):一般的に台湾や日本など東アジアの国々は内向的な文化で、謙虚さや傾聴、内省を大切にする傾向があります。
対するアメリカ、しかもスポーツ業界はわかりやすく外向的な文化ですから、その違いには戸惑いました。とくにインターンとして働くうえでは、コミュニケーションの取り方や期待されることへのギャップに苦労しましたね。
たとえばアメリカの企業ではチームプレーが基本で、CEOの発言に対しても「自分はそう思わない」「こういうアイデアはどうでしょう」とディスカッションするのがあたりまえです。むしろ意見を言うことを期待され、黙っていると評価されません。
目上の人の言うことは絶対で、たとえ自分の意見と違っていてもそれを主張することなどない台湾文化で育ったわたしは、なかなかなじめませんでした。
そんな状況が少しずつ好転していったのは、努力して自分の「安全地帯(コンフォートゾーン)」から抜け出したからです。
どんなに気が重くても上司やCEOとていねいにコミュニケーションを取り、自分の考えを伝えることから逃げなかった。それによってお互いへの理解が深まってから、仕事がうまく進むようになりました。
「準備」が唯一最強の解決策
――上司はもちろん、CEOに自分の意見を伝えるのは内向型人間にとって相当なプレッシャーかと思いますが……?
チャン:それはもう!(笑) 現在勤めている会社に7年在籍していて、最近はCEOと毎週1対1で話をしているにもかかわらず、自分の意見を伝えるときはいまだにとても緊張します。
その対策としてできることは、ただひとつ。周到に準備することだけです。
自分の質問や意見のリストはもちろん、相手からの想定質問も考え、それに対する回答もすべて用意する。考えうる限りのシナリオを用意して、自分を安心させてから面談にのぞんでいます。
――そうやって事前準備に時間をしっかりかけられるのは、内向型の強みですね。
「自分の土俵」で戦う
――コンフォートゾーンから抜け出すこと以外に、内向型の人が職場で成果を出すために必要なマインドはありますか?
チャン:みなさんにもっとも伝えたいのは、他人の土俵ではなく「自分の土俵」で戦うということです。そのためには、自分の「弱み」ではなく「強み」に注目する必要があります。
わたしの場合、内向的かつ英語もネイティブレベルに達していないという弱みがある一方で、「バイリンガルである」と「東アジア文化への深い理解がある」という2つの武器を持っていました。
その2つの強みを軸にして、「アジアに関するミッションを担当する」という自分のポジションを戦略的に確立していったのです。きっと、アメリカやヨーロッパの案件など「他人の土俵」では、いまのようなポジションは得られなかったと思います。
こうした戦い方は、内向的な人に限らず、すべての人に当てはまるのではないでしょうか。
ストレスに強い人、弱い人の考え方の違いとは?
──「エネルギーの使い方」を意識する
――なるほど。そうしてチャンさんのように、ストレスにつぶされることなく自分らしく活躍できる内向型の人がいる一方で、ストレスに弱い人もいます。なにがその二者を分けるのでしょうか?
チャン:「エネルギーの使い方」だと思います。
外向的な人にとってのエネルギーは、ほとんど無尽蔵に湧き出てくるもの。
一方、内向型の人にとってのエネルギーは非常に貴重な資産です。
ストレスに負けてしまったり、「やるべきことはわかっているけれどパワーが出ない」といった状況に陥ったりするのは、エネルギー管理ができていないからかもしれません。
大切なのは、すべきことの優先順位を決め、何にどれくらいのエネルギーを注ぐか戦略を立てて活動することです。効率と効果を最大化するための、「投資」の方法を理解するイメージですね。
そのためにはまず、自分は「何をしたらエネルギーレベルが下がるのか」、そして反対に「何をしたらエネルギーをチャージできるのか」を知ることからはじめるといいでしょう。
たとえばわたしの場合、ちょっとした雑談ですぐにエネルギーがすり減りますし、家に帰ってひとりでゆったり過ごすとエネルギーが回復していくのを感じます。
「これ以上はダメ」というポイントを知る
――人によって、エネルギーの備蓄量や消耗度が違うんですね。
チャン:また、「心の境界線」を設定することも重要です。内向型の人はたくさんの刺激に触れることや、他人にずかずかと心に踏み込まれるのが得意ではありません。
自分が快適に過ごすための限界ラインがどこにあるのか知り、その境界からはみ出さないよう気をつけてください。
自分の生活、もっと言えば人生を管理するのは自分です。仕事や職場で燃え尽きてしまわないよう、エネルギーをどう分配し、投資するか考え抜くことが重要だと思います。
【大好評連載】
第1回「無口でも評価される人」と「軽んじられる人」の1つの違い
ミネソタ大学大学院修士課程修了、ハーバード大学、清華大学でリーダーシップ・プログラム修了。ハーバード・シード・フォー・ソーシャル・イノベーション、フェロー。アメリカの非営利団体でフィランソロピー・アドバイザーを務める。過去2年間で行ったスピーチは200回以上に及ぶ。15年以上にわたり、アメリカ州政府やメジャーリーグなど、さまざまな業界で活躍してきた。2018年、ガールズ・イン・テック台湾40アンダー40受賞。本書『「静かな人」の戦略書』は台湾でベストセラー1位となり、20週にわたりトップ10にランクイン、米ベレットコーラー社が28年の歴史で初めて翻訳刊行する作品となり、第23回Foreword INDIES「ブック・オブ・ザ・イヤー」特別賞に選出されるなど話題となっている。現在は母国の台湾・台北市に拠点を置きながら、内向型のキャリア支援やリーダーシップ開発のため国際的に活躍している。
からの記事と詳細 ( 「ストレスに強い人」「弱い人」考え方の1つの違い - ダイヤモンド・オンライン )
https://ift.tt/I4od5Rw
No comments:
Post a Comment